LinkedIn「AIスロップらしい」通報ボタンを導入。投稿者への非公開通知や『Enhance your post』廃止も
LinkedInが2026年7月30日、投稿やコメントに対して「Seems like AI slop(AIスロップのように見える)」と通報できるボタンを導入したと発表した。最高製品責任者(CPO)のハリ・スリニヴァサン氏がLinkedIn上の投稿で明らかにしたもので、あわせてAIが文章を書き換える「投稿を強化(Enhance your post)」機能の廃止も同時に発表されている。さらに8月24日には、同氏がこのボタンの利用実績を追加で報告し、リリースから約2週間で100万人以上がクリックしたこと、AIスロップと分類された投稿の閲覧数が数週間前と比べて40%減少したことを明らかにした。本記事では、この機能の仕組みと、企業アカウント運用者が実務でどう向き合うべきかを整理する。
「Seems like AI slop」ボタンとは何か
このボタンは、フィード上の投稿・コメント右上にある「…」(三点リーダー)メニューを開くと表示される。「保存」「リンクをコピー」といった既存の操作項目と並んで配置されており、ユーザーが「この投稿はAIが機械的に生成した低品質なコンテンツだ」と感じた場合にワンクリックで報告できる。米TechCrunchの報道(2026年7月30日付)によると、この通報は既存の「不適切なコンテンツの通報」とは別枠の機能で、LinkedIn側が投稿の性質を判定するAIモデルを継続的にチューニングするためのシグナルとして使われる。
スリニヴァサン氏は発表時のLinkedIn投稿で「AIスロップは私たち全員にとって最優先課題だ。人々は本物の人とつながり、本物の視点・アイデア・専門性を共有するためにLinkedInに来ている」とコメントしている(2026年7月30日)。「AIスロップ」という言葉自体の定義や、YouTubeなど他プラットフォームでの排除の動きについては「AIスロップ」とは?YouTubeの排除方針と収益化への影響を徹底解説で詳しく解説している。
通報後、投稿はどう扱われるのか
通報されたからといって、その投稿が即座に削除されたり非表示になったりするわけではない。TechCrunchの取材に対しLinkedIn側が説明した内容によれば、通報データは主に次の2つの用途に使われる。
- 配信範囲の調整:新設した分類モデル(クラシファイア)がAIスロップまたは低品質と判定した投稿は、フォロー外のユーザーへのおすすめ表示(ネットワーク外への拡散)で優先度が下がる。
- 投稿者への非公開フィードバック:AIの多用によって「本人が書いたものに見えない」と受け取られていると判断された場合、投稿者本人の投稿分析(アナリティクス)画面上にのみ、その旨が非公開で表示される。フォロワーや第三者には通知されない。
この非公開フィードバックは、露骨な自動生成コンテンツと、AIを下書きの推敲程度に使っている投稿を同列に扱わないための仕組みとされている。LinkedIn側は「AIで自分の文章を磨くこと」と「AIスロップ」を区別する必要があると説明しており、後者だけを機械的に狙い撃ちする設計にしたい考えだ。
あわせてLinkedInは、単発の通報だけで投稿者への不利益(アカウント制限など)が生じないよう、複数のシグナルを束ねて評価する仕組みを構築しているとも説明している。特定の投稿者に対する嫌がらせ目的の集団通報(brigading)を防ぐための安全策と位置付けている。
「投稿を強化」機能の廃止と代替の校正機能
今回の発表でもう一つ見逃せないのが、LinkedInが自社のAI執筆支援機能「Enhance your post(投稿を強化)」を廃止したことだ。この機能は、ユーザーが書いた下書きをAIが書き直し、より整った文章に変換するものだった。米メディアInc.(2026年8月3日付)は、この機能自体がAIっぽい定型文を大量生産する一因になっていたと指摘している。
後継として提供されるのは、文章の「声(トーン)」を書き換えずに誤字脱字や文法だけを直す校正(プルーフリーディング)機能だという。TechCrunchの報道では「voice(書き手の個性)を変えるのではなく、言葉を校正する機能」と説明されており、LinkedIn自身がAIによる文章の均質化に一定のブレーキをかけた形になる。
このほかLinkedInは、投稿の自動化対策として「1日あたり数十万件の自動コメント投稿の試みをブロックしている」「ここ数カ月で数十億件に上るその他の自動化行為(大量投稿・スロップの機械的拡散など)をブロックした」ともスリニヴァサン氏は明らかにしている。プロフィール・企業ページの認証(Verification)機能の対象拡大や、特定の企業ページからのコメントをブロックできる機能の追加も、同時に発表された対策の一部だ。
導入から2週間で見えた効果と、専門家からの懸念
スリニヴァサン氏は8月24日(現地時間、LinkedIn上の投稿より)に続報を出し、リリースから約2週間で「Seems like AI slop」ボタンが100万回以上クリックされたこと、LinkedIn社内でAIスロップに分類しているコンテンツの閲覧数が、導入前の数週間と比べて40%減少したことを報告した。同氏は「進歩はあったが、LinkedInが本物の人間性と本物の視点を見つけられる場であり続けるために、やるべきことはまだ多い」とも述べている(GIGAZINE、2026年8月24日付報道より)。
一方で、機能公開直後から専門家・マーケターの間には懸念の声も上がっていた。米Inc.の記事(2026年8月3日付)では、マーケティング会社創業者のニック・ベネット氏が「AI生成コンテンツを軸にアルゴリズムを構築してきたプラットフォームが、それを通報しろと言っている」とMicrosoft(LinkedIn親会社)のAI事業との利益相反を指摘。また、Institute for Futures Studiesのヴァルデマー・インドール氏は「本当の課題はAI生成テキストの識別ではなく、このシグナルがコンテンツの質を反映しているのか、それとも意見の不一致や組織的な通報を反映しているだけなのか、という信頼性の担保だ」とコメントしている。「AIスロップ」の定義自体が曖昧で変化し続けるという点は、スリニヴァサン氏自身も発表時に認めている論点であり、通報が濫用された場合の誤検知(false positive)リスクは今後も注視が必要だ。
なお、AI生成投稿の比率については調査によって数値が異なる。Originality.aiの推計(Inc.の記事で引用、2026年7月時点)では長文投稿の81%がAI生成の可能性が高いとされる一方、別の調査(2026年7月14日公開、GIGAZINEが報じたもの)では40.5%という数値も報告されている。調査手法や対象範囲が異なるため、単純比較はできない点に注意したい。

通報された投稿がたどる流れ。投稿者には非公開で通知が届く。
【企業アカウント運用者向け】自社の投稿を「AIスロップ」と誤解されないための実務チェック
ここまでの機能解説を踏まえ、企業としてLinkedInを運用する立場から実務的に押さえておくべき点を整理する。個人ユーザー向けの「通報のやり方」を紹介する記事は既に複数あるが、発信する側の企業アカウントが何を確認すべきかという視点は手薄になりがちだ。
- 「投稿を強化」機能に依存した投稿フローの見直し:廃止された「Enhance your post」で下書きをまるごと書き換えていた運用担当者は、今後はこの機能自体が使えなくなる。校正機能への置き換えを前提に、AIで生成した文章を「自社の言葉」に近づける編集工程を投稿フローに組み込む必要がある。
- 投稿分析(アナリティクス)のフィードバック欄を定期確認する:LinkedInは今後、AI多用と判断された投稿者に非公開の通知を出す。これは外部から見えないため、担当者が自ら投稿分析画面を確認しにいかない限り気づけない。週次または月次の運用チェック項目に「通報・フィードバック状況の確認」を加えることが実務上の対策になる。
- 定型的すぎる企業投稿のトーンを見直す:「〜という学びがありました」「皆さんはどう思いますか?」といった、AI生成物に典型的な締めくくり表現を機械的に多用していると、人間が書いた投稿であっても「AIスロップらしい」と誤って通報されるリスクがある。担当者個人の具体的な経験・数字・固有名詞を盛り込み、定型句を減らすことが誤通報を避ける実務的な予防策になる。具体的なプロンプトや編集テクニックはSNS投稿をAIで作成して「AIっぽさ」を消すコツ|プロンプトと編集術にまとめている。
- 複数投稿者体制のアカウントは執筆ルールを揃える:企業ページ・複数名の社員アカウントを併用している場合、投稿者ごとにAI依存度がばらつくと、特定の投稿者だけが繰り返し通報対象になりかねない。社内でAI活用の範囲(下書き作成まで可、公開文はAI由来の言い回しを人力で置き換える、など)をルール化しておくと運用が安定する。
まとめ
「Seems like AI slop」ボタンは、投稿を即座に削除する強制的な仕組みではなく、LinkedInが自社の分類モデルを鍛えるためのシグナル収集と、投稿者への非公開フィードバックを組み合わせた仕組みだ。導入から2週間で100万クリックを超え、対象コンテンツの閲覧数が4割減少したという実績が出ている一方、「AIスロップ」の定義自体が曖昧であることや、通報の濫用・組織的な通報による誤検知の可能性は専門家からも指摘されている。企業アカウント運用者としては、AI執筆支援機能の仕様変更に投稿フローを合わせつつ、定型的な言い回しを避けて自社らしい文章を維持することが、通報リスクを避ける現実的な対策になる。
出典
- TechCrunch「LinkedIn adds a button to report AI-generated ‘slop’」2026年7月30日公開 https://techcrunch.com/2026/07/30/linkedin-adds-a-button-to-report-ai-generated-slop/
- Hari Srinivasan氏(LinkedIn CPO)LinkedIn投稿「AI slop is a top priority for all of us」2026年7月30日公開 https://www.linkedin.com/posts/hsrinivasan1\_ai-slop-is-a-top-priority-for-all-of-us-share-7488612006321889282-Ps8Z/
- Inc.「LinkedIn Just Added a Button to Report AI Slop. There’s Just 1 Problem」2026年8月3日公開 https://www.inc.com/chris-morris/linkedin-just-added-a-button-to-report-ai-slop-theres-just-1-problem/91383248
- GIGAZINE「LinkedInの『AIスロップ通報ボタン』が100万人に使用されたと責任者が明かす」2026年8月24日公開 https://gigazine.net/news/20260824-ai-slop-button-million/
- GIGAZINE「LinkedInに『AIスロップ通報ボタン』が登場」2026年7月31日公開 https://gigazine.net/news/20260731-linkedin-seems-like-ai-slop-button/
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