X、動画エディタの字幕を手動で編集可能に。Grokによる修正・翻訳にも対応し、企業アカウントの動画運用はどう変わるか

misosil編集部

Xは2026年10月4日、投稿画面の動画エディタを刷新し、自動生成された字幕を手動で書き換えられるようにした。あわせて、字幕の修正と他言語への翻訳をAIアシスタントのGrokに任せる機能も加わっている。

字幕の自動生成は、7月にiOS版のエディタへ搭載された時点から使えた。ただ、固有名詞や専門用語が誤認識されても直す手段が乏しく、そのまま投稿するか、外部アプリで作り直すかの二択になりがちだった。今回の更新は、その「最後の一手間」をX内で完結させるものだ。

この記事では、発表された内容を整理したうえで、企業アカウントの運用担当者が動画の投稿フローにどう組み込むべきか、翻訳機能を使うときに何を点検すべきかを考える。

今回の更新で何が変わったか

Xのクリエイター向けプロダクトを担当するAllegra Jacchia氏が、自身のXアカウントで更新を告知した。Social Media Today(2026年10月4日付)やSocial Samosaなどの報道によると、変更点は大きく3つある。

Xの動画エディタ更新で追加された、字幕の手動編集・Grokによる字幕修正・Grokによる字幕翻訳の3機能と、7月・8月からの拡張の流れを示した図解

2026年10月の更新内容と、7月・8月からの拡張の流れ

1つ目は、エディタ全体のレイアウトの整理だ。Jacchia氏は新しいエディタを「cleaner, more intuitive, and much easier to use(より整理され、直感的で、使いやすい)」と表現している。

2つ目は、字幕の手動編集である。自動生成された字幕を、投稿前のコンポーザー(投稿作成画面)の中で直接書き換えられる。これまでの字幕機能は「生成して載せる」ところまでだったので、誤認識を直せるようになった意味は大きい。

3つ目は、Grokとの連携だ。字幕の誤りをGrokに修正させたり、字幕を別の言語に翻訳させたりできる。翻訳は、投稿する前の段階で行える。

Jacchia氏は更新の狙いについて、「Captions are one of the simplest ways to keep people watching, especially when so many people watch video with the sound off(字幕は視聴の継続を促す最も簡単な方法の一つで、音を出さずに動画を見る人が多いのでなおさらだ)」と説明している。Xは今後もエディタの改善を続ける方針を示しており、追加の更新が近いうちに出てくるとみられる。

なお、公式の投稿や報道では、今回の更新が使えるOS(iOS・Android・Web)、字幕の編集やGrokの利用に有料プランが必要かどうか、Grokが翻訳できる言語の範囲といった点は示されていない。日本語の字幕を英語などに翻訳できるかどうか、翻訳の精度がどの程度かも、現時点では公式の説明がない。業務で使う前に、自社アカウントの環境で挙動を試しておく必要がある。

7月・8月の動画機能拡張との関係

今回の更新は単発のものではなく、Xが夏から続けてきた動画編集機能の拡張の延長にある。

2026年7月6日(現地時間)、プロダクト責任者のNikita Bier氏が、iOS版アプリに新しい動画エディタとレコーダーを投入したと発表した。窓の杜(2026年7月7日付)によると、このとき搭載されたのは、多言語のキャプションを動画に重ねて表示し見た目をカスタマイズする機能と、Xのポストやカメラロールの写真を背景にして動画を撮れるグリーンスクリーン機能である。対応OSはiOS 15以降とされ、X Corp Japanの公式アカウントも、字幕の追加が日本語に対応していると案内していた。

8月にはテキストと絵文字を動画に重ねるオーバーレイ機能が加わった。この経緯は、X、iOS版動画エディタにテキスト・絵文字オーバーレイ機能を追加。グリーンスクリーン・多言語字幕に続く拡張の中身と企業アカウントの使い方で詳しく扱っている。

時系列で並べると、次のようになる。

時期追加された機能動画制作のどの工程に効くか
2026年7月新しい動画エディタとレコーダー、多言語キャプション、グリーンスクリーン撮影と字幕の自動付与
2026年8月テキスト・絵文字オーバーレイ訴求文言や強調語の焼き込み
2026年10月字幕の手動編集、Grokによる修正・翻訳、レイアウト刷新字幕の品質管理と多言語化

7月は「作る」、8月は「飾る」、10月は「直して広げる」と整理できる。Social Media Todayは、Xがこうしたネイティブの制作ツールを充実させる狙いを、クリエイターが他のアプリで編集した動画を転載するのではなく、X上でオリジナルの動画を作るよう促すことにあると伝えている。

「字幕を直せる」ことが運用で意味するもの

字幕の手動編集は地味な機能に見えるが、企業アカウントの運用ではいくつかの意味がある。

音を出さずに見る人への最低限の品質保証

動画は、通勤電車やオフィスなど、音を出せない環境で見られることが多い。そうした場面では、字幕が動画の中身そのものになる。字幕に誤りがあると、誤った内容がそのまま伝わる。

自動生成の字幕で特に起きやすいのは、固有名詞の取り違えだ。商品名、サービス名、人名、社名、型番、英語の略語などは、一般的な語彙に比べて認識の精度が落ちやすい。これらをその場で直せるようになったことで、「自動字幕は便利だが企業の公式投稿には使えない」という判断を見直す余地が出てきた。

外部アプリを経由しない投稿フローの短縮

これまで、字幕の誤りを直すには、動画を外部の編集アプリに持ち出して字幕を作り直し、書き出してから再度Xに投稿する必要があった。手順が増えるほど、投稿までの時間が延び、バージョン管理のミスも起きやすくなる。

速報性が価値になるキャンペーンの告知、イベント会場からの現地レポート、新商品の発表といった投稿では、撮影から投稿までが数分で済むかどうかが成果を左右する。X内で撮影、字幕の生成、修正、投稿までを完結できれば、担当者のスマートフォン1台で回せる。

誰が字幕を確認するかを決める必要が出てくる

機能が使えるようになると、運用側には新しい決めごとが生まれる。字幕を直せるということは、字幕の最終責任を誰が持つかを決めておかなければならないということでもある。自動生成のまま投稿して誤りが出た場合、それは企業アカウントの公式な表現として残る。

企業アカウント向け:字幕運用のチェックフロー

ここからは、字幕編集とGrokを投稿フローに組み込む場合の考え方を、運用者の視点で整理する。

投稿前に確認する項目を固定する

字幕の確認は、担当者の感覚に任せると抜けやすい。次の4点を固定のチェックとして持っておくとよい。

  1. 固有名詞(社名・商品名・サービス名・人名・地名)が正しい表記になっているか
  2. 数字、日付、金額、型番が音声の内容と一致しているか
  3. 同音異義語の取り違えがないか(「機会」と「機械」、「以降」と「移行」など)
  4. 音を消した状態で通して再生し、字幕だけで内容が伝わるか

とくに2は、誤りがあると景品表示や契約条件に関わる誤解を招きかねない。キャンペーンの応募期間や割引率を動画で伝える場合は、字幕の数字を必ず目で確認する。

Grokによる修正は「下書きの整え役」と考える

Grokに字幕の修正を任せられるのは便利だが、修正結果が正しいかどうかを判断するのは人間の側だ。Grokは文脈から自然な表現に直そうとするため、話者が実際に言った言葉と、意味は近いが違う言葉に置き換えてしまう可能性がある。社名や商品名のように、一字の違いが問題になる語は、Grokの修正後にも必ず目で確かめる。

実務では、次の順番が現実的だ。

  • 自動生成された字幕を、まず手動で固有名詞と数字だけ直す
  • 文章全体の読みやすさをGrokに整えさせる
  • 整えた結果を、元の発話と照らして最終確認する

この順なら、Grokが誤った言い換えをしても、最終確認の段階で気づける。

翻訳機能を使うときの注意点

字幕の翻訳は、海外のフォロワーや越境ECの顧客に向けた動画で威力を発揮する可能性がある。一方で、企業の公式な発信を機械翻訳で出す場合には、いくつか点検すべきことがある。

最初に、ブランド名や商品名が翻訳されてしまっていないかを見る。固有のブランド名は原語のまま残すのが基本で、一般名詞のように訳されると別の意味になる。次に、敬語や丁寧さの度合いだ。日本語の字幕を翻訳すると、言語ごとの丁寧さの違いが出やすく、ブランドの口調と合わなくなることがある。最後に、法務に関わる表現である。「最安値」「必ず効果が出る」といった断定的な表現は、国や地域によって規制や受け止め方が異なる。翻訳によって意味が強まっていないかを見ておく。

翻訳対応の言語や精度は公式に示されていないため、最初は社内の担当者が読める言語で試し、翻訳結果を目で確かめられる範囲から始めるのが安全だ。

外部の動画編集ツールとの使い分け

字幕の編集がX内で完結するようになっても、外部ツールが不要になるわけではない。役割は次のように分けられる。

用途X内蔵エディタ外部の動画編集アプリ
速報・現地レポート向いている(撮影から投稿まで短時間)手順が増えやすい
字幕の誤り修正今回から可能従来から可能
凝ったアニメーション・複数フォント限定的向いている
ブランドガイドラインに沿った統一デザインテンプレートの自由度に限りがある向いている
複数のSNSに同じ動画を展開Xに特化書き出しを使い回せる

日々の速報や現地の様子を伝える動画はX内蔵のエディタで素早く出し、ブランドの顔になるキービジュアル的な動画は外部ツールで作り込む、という二段構えが無理のない運用だ。ライブ配信のアーカイブから見どころを切り出して投稿する場合も、字幕を付けておけば、配信を見ていなかったフォロワーに要点が届きやすい。配信の仕組みは、X「Live Studio(ライブスタジオ)」とは?クリエイタースタジオに統合された新ライブ配信ツールを解説にまとめている。

効果測定の考え方

字幕を整えた動画と、字幕を付けなかった動画で、成果にどの差が出るかを見ておくと、運用ルールを根拠のあるものにできる。Xの標準アナリティクスには、字幕の有無を比較する専用の指標はない。そのため、投稿の管理表に「字幕あり(手動修正済み)」「字幕あり(自動生成のまま)」「字幕なし」の区分を設け、動画の視聴数と視聴完了に近い指標を週次または月次で並べて比べるのが現実的だ。

数週間分のデータがたまったら、「冒頭3秒で内容が伝わる字幕を必ず入れる」「数字を含む動画は字幕の数字を二人で確認する」といった社内ルールに落とし込む。数字が少ないうちは、結論を急がず、傾向を見るにとどめる。

よくある質問

Q. 字幕を手動で編集する機能は、すべてのアカウントで使えますか?

A. 公式の投稿や報道では、対応OSや有料プランの要否は示されていない。自社アカウントのアプリで、動画の投稿画面を開いて確かめる必要がある。

Q. Grokで日本語の字幕を英語に翻訳できますか?

A. Grokが字幕を他の言語に翻訳できることは報じられているが、対応する言語の範囲は示されていない。日本語から英語への翻訳が使えるかどうかは、実際の画面で試して確かめる。

Q. 自動生成の字幕をそのまま投稿しても問題ありませんか?

A. 機能上は可能だが、固有名詞や数字の誤りは企業の公式な表現として残る。公式アカウントでは、投稿前に手動で確認することを勧める。

Q. これまでの字幕機能と何が違いますか?

A. 7月に搭載された字幕機能は、多言語のキャプションを動画に重ねて表示し、見た目を調整するものだった。今回は、生成された字幕の中身を書き換えられる点と、Grokで修正や翻訳ができる点が加わった。

まとめ

  • Xは2026年10月4日、動画エディタを刷新し、字幕の手動編集とGrokによる字幕の修正・翻訳に対応した
  • 7月のiOS版エディタ(多言語字幕・グリーンスクリーン)、8月のテキストオーバーレイに続く拡張で、「字幕の品質管理」をX内で完結できる方向に進んでいる
  • 企業アカウントでは、固有名詞と数字の確認を投稿前のチェック項目として固定し、字幕の最終責任者を決めておく
  • Grokの修正と翻訳は下書きを整える手段と位置づけ、公式な表現として出す前に人間が目で確かめる
  • 対応OS、利用条件、翻訳できる言語は公式に示されていないため、導入前に自社のアカウントで挙動を試す

出典

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