LinkedInがデジタル名刺「ビジネスカード」を追加|QRコードとウォレット保存、企業の名刺運用はどう変わるか

misosil編集部

LinkedInは2026年10月15日(現地時間)、プロフィールの情報をもとにした自分専用のデジタル名刺「LinkedInビジネスカード」を発表した。デザインを自分好みに調整でき、スマートフォンのデジタルウォレットに追加して持ち歩ける。イベントや商談で会った相手と、その場でLinkedInのつながりを作るための機能だ。

同じ発表には、つながり限定の新フィードやクリエイター向けの収益化機能も含まれている。ただ、日本の法人営業では「名刺交換」が関係づくりの出発点であり、紙の名刺とLinkedInの距離が縮まることの意味は小さくない。本稿では、LinkedIn公式のニュースページとSocial Media Todayの報道で分かる範囲を整理し、企業アカウントの運用者が名刺と導線のルールをどう見直せるかを考える。

LinkedInビジネスカードとは何か

公式のニュースページは、この機能を「自分だけのデジタル名刺」と位置づけている。LinkedInのビジネスカードをデザインして自分らしくカスタマイズでき、直接会った人とのつながりを保ちやすくするための機能だと説明されている。

発表内容で分かる点を、先に表で整理する。

項目内容
機能名LinkedInビジネスカード(デジタル名刺)
発表日2026年10月15日(現地時間)。Social Media Todayは10月18日付で報道
載る情報プロフィールから取り込まれる顔写真と職種の説明、QRコード(Social Media Todayの報道による)
カスタマイズデザインを自分好みに調整できる
持ち歩き方スマートフォンのデジタルウォレットに追加できる
目的直接会った人と、無理なくつながり続ける
提供範囲「今後数か月かけて世界中に展開」と案内されている

提供は段階的に進むため、発表の時点で自分のアカウントに表示されない人がいても不思議ではない。日本のアカウントにいつ届くのかは、公式の発表では示されていない。

2018年のQRコード機能と何が違うのか

LinkedInがオフラインでの出会いをつながりに変える仕組みを用意するのは、これが初めてではない。2018年6月には、アプリ内のプロフィールQRコードを導入し、会った相手がスマートフォンでコードを読み取れば、その場でプロフィールを開ける仕組みを公式ブログで紹介していた。

Social Media Todayは、今回の機能を、基本の発想は2018年と同じで、そこにデザインのカスタマイズが加わったものと見ている。さらに、2018年の機能は主要なつながりの手段としては定着しなかったとも書いている。

LinkedInのデジタル名刺について、2018年のQRコード機能との違い、載る情報、持ち歩き方、企業が決めておくルールの4点を整理した図解 2018年のQRコードに「見た目の調整」と「ウォレット保存」が加わった。企業側はルール作りが先

両者の違いを並べると、変わった部分がはっきりする。

観点2018年のQRコード今回のビジネスカード
見せ方アプリ内のコードを提示する顔写真・職種・QRコードを載せた名刺として提示する
見た目調整できる点は案内されていないデザインを好みに調整できる
持ち歩きアプリを開いて見せるデジタルウォレットに追加できる
位置づけつながりを作る手段の1つ会った人とつながり続けるための機能

最大の差は、ウォレットに追加できることで、提示までの手間が減りそうな点にある。名刺交換の場面では、アプリを探して起動する数秒の手間が、そのまま「やめておこう」という判断につながりやすい。ウォレットに入っていれば、紙の名刺を取り出す感覚に近づく。

名刺機能と同時に発表された機能

今回の発表では、名刺と同じ「つながりを深める」という文脈で、次の機能も案内されている。

  • つながりやフォロー中の相手の投稿を集めたフィードの試験導入(米国、インド、英国、オーストラリアの一部市場で先行)
  • プレミアム会員が、プロフィールごとに「どこで会ったか」「何を話したか」「いつ連絡し直すか」を非公開のメモとして残せる機能(世界で提供)
  • 有益なコメントを投稿者がピン留めして、議論の流れを導ける機能
  • クリエイター向けのダッシュボード(今後数週間かけて世界で提供)

つながり限定フィードの狙いと企業アカウントへの影響は、LinkedIn「Networkタブ」試験導入、つながり限定フィードで企業アカウントの投稿はどう扱われるかで整理している。クリエイター収益化の側は、LinkedIn「Advice Sessions」とは|有料・無料の1対1相談と広告収益分配テスト、クリエイター収益化の新機能を整理にまとめた。

この並びを見ると、LinkedInが狙っているのは「名刺で会った人を、メモとフィードで育てる」という一連の流れだと読み取れる。名刺は入口にすぎず、本命はその後の関係維持にある。

名刺交換の流れはどう変わるか

デジタル名刺が使われる場面を、具体的な流れで考えてみる。

  1. 展示会やセミナーで名刺を交換する代わりに、ウォレットの名刺を表示してQRコードを読み取ってもらう
  2. 相手はLinkedInのプロフィールを開き、つながり申請を送る
  3. 会った直後に、プレミアム会員なら相手のプロフィールに「どこで会ったか」をメモしておく
  4. 後日、つながり限定フィードやメッセージで接点を保つ

紙の名刺は、受け取った後に入力や整理の作業が発生する。LinkedInのつながりに変われば、プロフィールの更新が相手側にも反映されるため、名刺の情報が古くなる問題が起きにくい。この点は、日本の法人営業にとって実用的な利点になりうる。

一方で、相手がLinkedInを使っていなければ成立しない。日本では、外資系企業、スタートアップ、採用や海外取引に関わる職種など、LinkedInを日常的に使う層がまだ限られる。紙の名刺が不要になるというより、「紙の名刺に加えて、QRコード1つで海外の取引先ともつながれる」という補完的な使い方が現実的だ。

【企業アカウント運用者向け】名刺を会社のSNS導線に変える設計

個人の機能であるデジタル名刺は、会社のSNS運用とは無関係に見える。だが、従業員が毎日のように提示する「会社の顔」になるため、企業側がルールを持たないと、ブランドの見え方や情報の扱いがばらつく。運用チームが先に決めておける点を整理する。

1. 名刺に載せる肩書きと所属表記を統一する

デジタル名刺は、プロフィールの内容がそのまま反映される。プロフィールの肩書きが「Growth Hacker」「営業」「Sales Manager」のようにばらばらだと、相手に伝わる会社の印象も揃わない。会社名の表記(株式会社の前後、英語表記の綴り)、部署名の書き方、肩書きの日英併記のルールを決め、全従業員のプロフィールに適用してもらう。これは新機能を待たずに今すぐ着手できる。

2. 会社ページとのひも付けを確認する

従業員のプロフィールの勤務先が、会社ページに正しくひも付いているか。ここがずれていると、名刺をきっかけにプロフィールを見た相手が、会社ページにたどり着けない。社名の旧表記や、グループ会社名で登録されたままの従業員がいないかを点検しておく。従業員の投稿を会社の発信として生かす考え方は、SNSのKPI設計|媒体別の指標一覧とレポートの作り方の指標設計と合わせて考えると、個人の名刺から会社ページへの流入を測りやすくなる。

3. 名刺から先の「最初の接点」を設計する

名刺で出会った相手が最初に見るのは、従業員個人のプロフィールだ。ここに、会社が紹介したい最新のホワイトペーパー、ウェビナー、採用情報への導線を置くかどうかで、その後の関係が変わる。ただし、営業色が強すぎるプロフィールは、つながりを断られる原因になる。「何をしている人か」が2行で伝わり、興味があれば会社ページに進める、という順序が自然だ。

4. 個人情報と会社情報の線引きを決める

デジタル名刺は、本人の判断で自由に共有できる。便利さの裏側で、次のような点を事前に取り決めておく必要がある。

  • 名刺に載せてよい情報の範囲(個人の携帯番号、メールアドレス、自宅に近い所在地の表記など)
  • 退職・異動のときにプロフィールとウォレット上の名刺を更新・削除する手順
  • 業務で得た相手の連絡先やメモを、LinkedIn上にどこまで残してよいか

とくにプロフィールのメモ機能は、本人だけが見られる非公開の記録だ。相手との会話内容を残せるため、顧客情報の管理ルールとの整合を、情報システム部門や法務と確認しておきたい。

5. 展示会・イベントでの使い方を決める

イベントに出展する会社は、ブース担当者全員が同じ手順で名刺を提示できるように、運用メモを用意しておくとよい。たとえば、次の項目を決める。

項目決めておくこと
提示の手順ウォレットの名刺を開き、QRコードを読み取ってもらう流れを全員で練習する
紙の名刺併用する。LinkedInを使わない相手向けに、必ず用意する
つながり申請当日中に申請を送るか、翌営業日に送るかを揃える
会話のメモプレミアム会員はメモ機能、そうでない場合は社内のCRMに残す
担当者の引き継ぎ相手と接点を持った担当者が不在のとき、誰がフォローするかを決める

6. 計測は個人の動きと会社ページの動きを分けて見る

デジタル名刺経由でどれだけ会社ページが見られたかは、LinkedInが専用の指標を提供するかどうかで変わる。発表の時点では、名刺の閲覧数やスキャン数の分析機能について触れられていない。指標が提供されるまでは、イベント後に増えたつながりの数、会社ページのフォロワー数の増加、問い合わせ時の流入元ヒアリングといった、間接的な数字で見るのが現実的だ。

日本の企業が注意したい点

提供範囲が「今後数か月で世界へ展開」とされているため、すぐに全員が使えるとは限らない。また、機能の細かい仕様はまだ多くが示されていない。運用ルールを作る側も、仕様が固まるまでは「決められる範囲を先に決める」姿勢が必要だ。

デジタル名刺が普及しても、日本のビジネス慣行では、紙の名刺を丁寧に両手で受け渡す場面が当面続く。デジタル名刺は、紙の名刺を置き換えるというより、LinkedIn上のつながりを増やしたい場面の補助として位置づけたほうが、現場は混乱しにくい。

現時点で明らかになっていないこと

公式のニュースページと報道に書かれていない点は、次のとおりだ。

  • 日本を含む各国での提供開始の時期
  • カスタマイズできる範囲(配色、レイアウト、背景画像など)
  • ウォレットに対応するサービスの種類
  • 名刺の閲覧数やスキャン数を確認できるかどうか
  • 会社ページや従業員一括管理向けの機能の有無
  • 無料会員とプレミアム会員で、使える機能に差があるかどうか

これらは、提供が始まった後に公式のヘルプで確認する必要がある。

よくある質問

LinkedInのデジタル名刺は無料で使えるのか

プレミアム会員向けと明記されているのは、プロフィールごとの非公開メモ機能だ。名刺機能の対象となる会員の条件は、発表では示されていない。提供が始まった時点で公式の案内を確認したい。

紙の名刺はもう不要になるのか

不要にはならない。相手がLinkedInを使っていなければ、名刺の情報を渡せないためだ。日本の商習慣を考えても、当面は紙とデジタルを併用する運用になる。

日本でもすぐに使えるのか

「今後数か月かけて世界中に展開」と案内されており、日本への提供時期は示されていない。自分のアカウントに表示されるまで、LinkedInのアプリの更新を待つことになる。

2018年のQRコード機能とは別のものか

基本の発想は同じで、プロフィールを相手に渡すための仕組みだ。今回の機能は、デザインの調整とデジタルウォレットへの追加が加わった点が特徴とされている。

企業の会社ページでも名刺を作れるのか

発表では、個人のプロフィールから作る機能として紹介されている。会社ページ向けの機能であるという案内はない。

まとめ

  • LinkedInは2026年10月15日、プロフィールの情報をもとにしたデジタル名刺**「ビジネスカード」**を発表した。デザインを調整でき、スマートフォンのウォレットに追加できる
  • 顔写真・職種・QRコードを載せ、会った相手とすぐにつながるための機能だ。提供は今後数か月かけて世界へ展開される
  • 2018年のQRコード機能と発想は同じだが、見た目の調整とウォレット保存が加わった。アプリを開く手間が減る点が実用上の差になる
  • 日本では紙の名刺との併用が現実的だ。企業は、肩書きの表記統一、会社ページとのひも付け、個人情報の線引き、イベントでの提示手順を先に決めておくと、提供開始後にすぐ動ける
  • 仕様の多くは未公表のため、日本での提供が始まった時点で公式のヘルプを確認する

出典

関連する記事

まずは無料で相談