LinkedIn「Networkタブ」試験導入、つながり限定フィードで企業アカウントの投稿はどう扱われるか
LinkedInがつながり・フォロワー限定の新フィード「Networkタブ」を試験導入。おすすめフィードとの違いと企業アカウント運用への影響を整理。
LinkedInが2026年9月19日(現地時間)、フィード上部に新しいタブ「Network」を試験導入したと報じられた。中身は「直接つながっている人、または自分がフォローしている人・ページの投稿だけで構成される別フィード」というシンプルなものだが、これが実装されると、企業アカウントの投稿の届き方が今までと変わる可能性がある。一次情報であるSocial Media Todayの報道をもとに、発表内容の裏取りできる範囲とできない範囲を分けたうえで、企業のSNS担当者が今どう構えておくべきかを整理する。
Networkタブとは何か、発表の中身を整理する
Social Media Todayが2026年9月20日付で報じたところによると、LinkedInのチーフプロダクトオフィサーであるHari Srinivasan氏が9月19日、自身のLinkedIn投稿で新機能「Network」タブのテストを明らかにした。同記事が引用するSrinivasan氏のコメントは次のようなものだ。
「Networkタブは、あなたが明示的につながった、あるいはフォローした人たち、つまりあなたのネットワークとつながり続けるための機能です。誰もがもっと本物の人間関係を求めています。この機能が、そうした世界を取り戻す小さな一助になればと思っています」
要約すると、Networkタブに流れるのは「自分が承認したつながり」と「自分がフォローしているアカウント・ページ」の投稿のみで、これまでのメインフィード(いわゆる「おすすめ」フィード)のように、面識のない相手の投稿やアルゴリズムが拾ってきたトレンド投稿は混ざらない設計だとされている。
ここで注意したいのは、報道時点で確認できる情報が「trial run(試験運用)」という表現にとどまっている点だ。Social Media Todayの記事本文を確認した限り、対象地域が米国限定かグローバルか、対象ユーザーが無作為抽出なのか特定属性なのか、といった具体的な範囲は明記されていなかった。国内の一部メディアでは「米国限定でテスト中」という前提で語られることもあるが、一次情報からその一文だけを断定的に拾うのは避け、本記事では「地域・対象ユーザーの詳細は報道時点で不明」として扱う。日本での展開時期についても、現時点の報道に言及は一切ない。「検討されている」とすら書かれていないため、「未定」とだけ理解しておくのが正確だ。
「おなじみ」に見えて実は3度目、LinkedInが繰り返す「つながり限定フィード」の実験
今回のNetworkタブは、LinkedInにとって初めての試みではない。Social Media Todayの過去記事を辿ると、少なくとも次のような系譜が確認できる。
- 2022年ごろ、興味関心ベースでフィードタブを選べる「Discover」フィードを実験。ユーザーが見たいコンテンツの種類を自分でコントロールできる、より広範な設計だった。
- 2025年2月ごろ、「All(デフォルト)」と「My Network」の2タブ構成をテスト。My Networkタブでは「つながり・フォロー中のアカウントとページ・広告」のみを表示し、5週間の試験後にフィードバックを評価するという運用だったと報じられている。
- 2026年6月ごろには、トレンドの会話に接続するための「トピックベースのおすすめフィード」も試験されたとされる。
- そして今回、2026年9月のNetworkタブ。
過去のテストについてSocial Media Todayは「広範な展開には至っていない(evidently didn’t pan out)」と評しており、これまでの「つながり限定フィード」系の実験は軒並みメインフィードを置き換えるところまでは進んでいない。この文脈を踏まえると、Networkタブも「発表=すぐに全ユーザーへ展開」と捉えるのは早計で、今回もサブタブとしての限定的な検証にとどまる可能性を織り込んでおいたほうがいい。
一方で、LinkedInが同じ方向性のテストを3度目まで繰り返している事実そのものは軽視できない。1回で終わらず角度を変えて何度も試すというのは、運営側が「フィードの信頼性低下」を継続的な課題として認識している証拠でもある。実際、Srinivasan氏のコメントにある「本物の人間関係」という言葉は、エンゲージメントポッド(相互いいね・コメントの組織的な回し合い)やAI生成投稿の増加に対する問題意識と重なる。misosilでも既に、LinkedIn自身が「AIスロップらしい」投稿への通報ボタンを導入したことを取り上げているが(LinkedIn「AIスロップらしい」通報ボタンを導入。投稿者への非公開通知や『Enhance your post』廃止も)、Networkタブもこの一連の「フィードの質を取り戻す」施策の1つとして位置づけると理解しやすい。
「おすすめ」フィードとの決定的な違い
現在のLinkedInのメインフィードは、つながっていない相手の投稿や、エンゲージメントの高い投稿をアルゴリズムが拾い上げて表示する、いわゆる「おすすめ」型に近い。これに対してNetworkタブは、表示ロジックそのものが「明示的な関係の有無」に一本化される点が最大の違いだ。
| 比較項目 | おすすめ(メイン)フィード | Networkタブ |
|---|---|---|
| 表示対象 | 非接続ユーザーの投稿も含む(2次・3次のつながり、話題の投稿) | 自分がつながっている人・フォローしている人とページのみ |
| 選定ロジック | エンゲージメント予測などアルゴリズム主導 | フォロー・つながりという明示的な意思表示が基準 |
| 新規リーチ | 面識のない層への拡散が起きやすい | 起きにくい(既につながっている相手にしか届かない) |
| 企業アカウントにとっての意味 | 認知獲得・新規層への露出向け | 既存フォロワーとの関係維持・深耕向け |
おすすめフィードは拡散重視、Networkタブは関係重視という役割の違いを示した図
つまりNetworkタブが仮に本格導入された場合、企業アカウントの投稿は「知らない人に見つけてもらう経路」と「既につながっている人にきちんと届ける経路」が、フィード単位で明確に分離することになる。これまではメインフィード1本の中に両方の効果が混在していたため、どの投稿がどちらの効果を生んでいるのか可視化しづらかったが、Networkタブが定着すれば、少なくとも「関係維持」側の効果だけを切り出して観察できる環境が生まれる。
対象範囲・展開時期は「本稿執筆時点で不明」という前提を崩さない
繰り返しになるが、今回のテストについて一次情報から裏取りできているのは「9月19日にSrinivasan氏が発表した」「直接のつながり・フォローのみで構成される別フィードである」という2点までだ。対象国、対象ユーザー数、テスト期間、既存の「My Network」タブ(接続申請やお知らせを表示する既存の機能)との名称の整理・統合方針についても、報道時点では言及がない。
企業のSNS担当者としては、この段階で運用マニュアルを大きく書き換える必要はない。ただし、LinkedInが「つながり限定の表示」という方向性を繰り返しテストしているという事実自体は、今後の投稿設計に反映させておく価値がある。次のセクションでは、その具体的な打ち手を整理する。
【企業アカウント運用者向け】Networkタブ時代を見据えた「二正面」の投稿設計
ここが企業アカウント運用者にとって一番重要な論点になる。Networkタブの存在を前提にすると、これまでの「とにかくエンゲージメントを稼いでおすすめフィードに乗せる」という単一戦略から、投稿の役割を意図的に2種類に分けて考える必要が出てくる。
1. フォロワーと「つながり」は同じではないという整理をまず社内で共有する
LinkedInの会社ページ(Company Page)には「つながり」という概念がなく、あるのは一方向の「フォロー」だけだ。一方、個人アカウントには双方向承認制の「つながり」(上限3万人)と、それを超えた分、あるいは承認前でも成立する一方向の「フォロー」の両方が存在する。報道されているNetworkタブの説明「つながっている人、またはフォローしている人・ページ」を素直に読めば、会社ページのフォロワーも、個人アカウントの一方向フォロワーも、どちらもNetworkタブの表示対象に含まれる可能性が高い。つまり、これまで「エンゲージメント目的の当てにならない数字」として軽視されがちだったフォロワー数が、Networkタブ下では「投稿を確実に届けられる母数」としての価値を持ち直すことになる。
2. 投稿を「拡散用」と「関係維持用」に分けて設計する
具体的には、次のような役割分担が現実的だ。
- 拡散用コンテンツ(おすすめフィード最適化): 業界動向への切り口、数字を使ったフック、コメントを誘発する問いかけ型の投稿。非接続層の目に留まることを狙うため、最初の1〜2行の掴みを強めに作る。
- 関係維持用コンテンツ(Networkタブ最適化): 既にフォローしている・つながっている相手向けなので、強い煽り文句や釣りタイトルは不要。むしろ、社内の意思決定の裏側、担当者個人の所感、イベント後のフォローアップ、既存顧客への感謝といった「フォローしているからこそ読みたい」深度のある内容が刺さりやすい。
3. 「つながり申請の乱発」から「フォローされる理由づくり」へ比重を移す
Networkタブが定着する世界では、面識のない相手に手当たり次第つながり申請を送る運用の価値は相対的に下がる。それよりも、会社ページや役員個人アカウントを「フォローする理由」(定期的に有益な情報を出している、業界のアップデートが早い、など)を作り込み、フォロー数そのものの質を上げるほうが、Networkタブ経由の可視性という意味では効いてくる。これは、これまでmisosilで扱ってきた企業アカウントのリスク管理の話とも接続する。つながり申請を無差別に送る運用は迷惑行為として通報されるリスクもあり(LinkedInは危険?企業アカウント運用のリスクと対策)、Networkタブの登場は、量より質のフォロワー獲得へ運用の重心を移す一つの後押しになり得る。
4. 過去の類似テストが定着しなかった理由も踏まえておく
前述の通り、2022年のDiscoverフィード、2025年のMy Networkタブはいずれも全面展開に至っていない。理由の一つとして考えられるのは、つながり限定フィードだけに絞ると投稿量が少なく、フィードとして「間が持たない」ユーザーが一定数出てしまうことだ。企業アカウント側からすると、これは「Networkタブがメインの流入経路になる」と決め打ちするのではなく、あくまでおすすめフィードでの新規獲得と両立させる設計を維持すべき、という結論につながる。片方に全振りする運用は、今回もし機能が縮小・撤回された場合のリスクが大きい。
FAQ
Q. Networkタブは日本でも使えるようになりますか。 A. 2026年9月時点の報道では、日本を含む具体的な展開地域や展開時期への言及はない。「検討中」とすら書かれておらず、現時点では未定と理解するのが正確だ。
Q. 会社ページ(Company Page)の投稿もNetworkタブに表示されますか。 A. 報道されている説明は「つながっている人、またはフォローしている人・ページ」なので、会社ページをフォローしているユーザーには表示される可能性が高いと考えられる。ただし、これは説明文からの推測であり、LinkedInが個別に会社ページの扱いを明言したものではない点に注意したい。
Q. 今すぐ投稿頻度や内容を変えるべきですか。 A. 過去の類似テストが軒並み全面展開に至っていないことを踏まえると、今の段階で運用を全面的に切り替える必要はない。ただし、フォロワーの「質」を意識した投稿設計に少しずつ寄せておくことは、Networkタブが本実装されてもされなくても無駄にならない備えになる。
Q. おすすめフィードでの拡散対策とNetworkタブ対策は両立できますか。 A. できる。両者は目的が異なる(新規リーチ vs 既存関係の深耕)ため、投稿カレンダーの中で役割を分けて配分するのが現実的な運用だ。
まとめ
LinkedInのNetworkタブは、直接のつながり・フォロワーだけで構成される新フィードとして、2026年9月19日にチーフプロダクトオフィサーのHari Srinivasan氏が試験導入を明らかにしたものだ。対象地域や展開規模、日本展開の有無は報道時点で不明であり、過去にも同種のテスト(2022年のDiscover、2025年のMy Networkタブ)が広範展開に至らなかった実績がある以上、慎重に受け止める必要がある。
それでも、企業アカウント運用者にとって示唆的なのは、LinkedIn自身が「エンゲージメントの質」に繰り返し課題意識を持ち、その解決策として「明示的な関係」を軸にしたフィード設計を試し続けているという方向性そのものだ。おすすめフィード向けの拡散施策と、Networkタブのようなつながり限定フィードを見据えた関係維持施策を、投稿の役割ごとに切り分けて設計しておくことが、今後の変化に振り回されない運用の土台になる。
出典
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