LinkedInのクリエイター分析が拡張。投稿別一覧・保存/送信数・ネットワーク内外の閲覧を企業の社員発信にどう使うか

misosil編集部

LinkedInは2026年11月3日(米国時間)、クリエイター向け分析機能「Creator Insights」の新しい指標群について詳細を明らかにした。Social Media Todayの報道によると、LinkedInでコンテンツ部門のプロダクトディレクターを務めるSam Corrao Clannon氏が説明したもので、追加されたのは「投稿別パフォーマンス一覧」「投稿由来のフォロワー」「保存・送信数」「ネットワーク内外別の閲覧」の4点である。

個人の発信者向けの機能に見えるが、B2B企業にとっては無関係ではない。LinkedInでは社員や経営者の個人投稿を企業の発信に生かす取り組みが広がっており、社員アドボカシー(社員による自発的な情報発信)の効果をどう測るかは、多くの担当者が抱える課題だからだ。本稿では、報じられている新機能の内容を整理したうえで、企業アカウント運用者がKPIにどう組み込むかを考える。

今回追加されたCreator Insightsの4機能

Social Media Todayの2026年11月3日付の記事(Andrew Hutchinson氏)によると、新機能の概要は次のとおりである。

機能内容
投稿別パフォーマンス一覧投稿の情報と主要指標を1つの一覧に集約。インプレッション、閲覧数、視聴時間などを横並びで見られる
投稿由来のフォロワー特定の投稿をきっかけにフォローしたメンバーを表示。展開表示でプロフィールも確認できる(既存指標の更新)
保存・送信数投稿をブックマークした人数と、友人に送信した人数を表示(新指標)
ネットワーク内外別の閲覧閲覧がつながりのある人からか、そうでない人からかを区別して表示(新指標)

ClannonはLinkedIn上の解説記事「Understanding your new analytics」で、投稿一覧の狙いを「個々の投稿の分析画面を1つずつ開かなくても」比較できるようにすることだと説明したと報じられている。また、LinkedInはクリエイターが新指標をどう使うかを見たうえで、次の施策を判断するという。

なお、提供開始日、対象地域、利用条件については、報道では具体的に示されていない。日本のアカウントでいつから、どの範囲で使えるかは、公式発表では明らかになっていない。画面に表示されているかどうかは、各自のアカウントで確かめる必要がある。

投稿別パフォーマンス一覧

従来の投稿分析は、1本ずつ個別の分析画面を開いて見る形が中心だった。今回の一覧表示は、投稿ごとの主要指標を表で並べるもので、月間の投稿を比較してテーマや形式ごとの傾向を探す作業が速くなる。

運用者にとって実務上の利点は、集計の手間が減る点にある。これまで週次レポートのために投稿ごとの数字を手でスプレッドシートに転記していた場合、その一部が画面上の目視で済むかもしれない。ただし、一覧からのエクスポートや、企業ページの分析との統合については、報道では触れられていない。

投稿由来のフォロワー

「どの投稿でフォロワーが増えたか」は、これまでも一部の分析で見られた指標である。今回は、その投稿からフォローしたメンバーが誰か(プロフィール)まで展開表示で見られると報じられている。

B2Bでは、フォローしたのが見込み顧客の担当者なのか、同業者や求職者なのかを区別できるかどうかが重要である。フォロワー数の増加だけでは、営業やリクルーティングに効いているかは判断できない。誰がフォローしたかが見えれば、投稿テーマと読者層の対応を質的に検証できる。

保存・送信数

保存(ブックマーク)と送信(ダイレクトメッセージでの共有)は、LinkedInが2025年9月に投稿の分析へ追加した指標として、Social Media Todayが同年9月10日に報じている。当時は「エンゲージメント」データの中の「ソーシャルエンゲージメント」に、「保存」「LinkedInでの送信」として表示されると伝えられた。今回の報道では、クリエイター向けの分析の新指標として改めて位置づけられている。

注意したいのは、保存・送信が配信順位にどう影響するかについて、LinkedInが公式に説明していないことだ。2025年の報道でも、LinkedInの発言として順位への影響が示されたわけではない。保存・送信が増える投稿は「あとで読み返したい」「誰かに見せたい」と思われた投稿であり、内容の価値を示す行動データとして読むのが妥当である。

ネットワーク内外別の閲覧

つながりの内側(フォロワーや1次のつながり)からの閲覧か、外側からの閲覧かを分けて見られる指標である。以前に報じられた同種の指標では、外側の閲覧はフィード、おすすめ、リシェア、検索を経由した人とされ、インプレッションや発見(Discovery)の項目に表示されていた。

内側の閲覧が多ければ既存の読者に届いており、外側が多ければ新しい層に届いている。企業の認知拡大を目的とするなら、外側の比率が最も重要な指標の1つになる。

2026年10月のダッシュボード刷新との関係

今回の分析強化は、2026年10月に発表されたクリエイター向けツールの更新に続くものである。フランスのメディアGens d’Internetによると、LinkedInは10月15日に、オーディエンスとコンテンツの統計、下書き、予約投稿、公開済み投稿、収益化の選択肢をまとめた新しいダッシュボードを発表した。モバイルではプロフィール写真から開け、グローバル展開は数週間かけて進めるとされている。

このとき同時に伝えられたインストリーム広告(動画再生前広告)や有料の相談セッションなどの収益化は、米国など一部の限定提供だった。分析機能とは提供範囲が異なる可能性があるため、「クリエイター向け機能がまとめて日本で使える」とは受け取らないほうがよい。

独自視点:社員アドボカシーの効果測定にどう使うか

ここからは、企業アカウントを運用する立場でこの機能をどう使うかを考える。以下は報じられている指標を前提にした、運用上の設計案である。

企業ページと個人投稿は別の測定対象として設計する

LinkedInの企業ページには、ページ向けの分析機能が別に用意されている。一方、Creator Insightsは個人プロフィールに紐づく分析であり、見られるのは投稿した本人である。この分断が、社員アドボカシーの測定を難しくしている。

担当者が社員の個人投稿の数字を知るには、社員自身にスクリーンショットや数値を共有してもらう必要がある。新機能の投稿別一覧は、この共有を簡単にする。月に1度、一覧の画面を共有してもらうだけで、投稿ごとの傾向をつかめる。

ただし、社員の分析データを会社が集める場合は、目的と範囲を事前に伝えて同意を得ることが前提になる。人事評価に直結させると自発性が損なわれ、アドボカシーそのものが続かなくなる。

社員投稿の成果は「外側の閲覧」と「保存・送信」で見る

社員アドボカシーの価値は、企業の公式アカウントが持たない人脈に届く点にある。したがって、社員投稿の評価軸として次の2つを置くことを勧める。

  1. 外側の閲覧比率:投稿の閲覧のうち、つながり外の人が占める割合。社員の人脈を越えて広がったかどうかを示す
  2. 保存・送信数:読者が価値を感じて取った行動。「いいね」よりも、営業資料として使われる可能性や、社内で回覧された可能性に近い

いいねやコメントの数は、同僚や知人が義理で押すだけでも増える。社員が多い企業ほど、内輪の反応で数字が膨らみやすい。内側の閲覧と外側の閲覧を分け、保存・送信を併せて見れば、内輪の反応と実際の波及を区別できる。

運用設計の例

たとえば、従業員5名が月に各4本投稿する運用(月20本)を想定する。毎月の振り返りでは、次の表を作る。

見る項目目的判断の例
外側の閲覧比率新しい層への到達低い投稿は、社内向けの話題に偏っていないか見直す
保存数参照価値保存が多いテーマ(手順、チェックリスト、事例)を増やす
送信数個別に共有したくなる価値営業やパートナーに送られやすい内容を把握する
投稿由来のフォロワー継続接点の獲得見込み顧客の属性が多い投稿の型を探す
投稿別の閲覧数・視聴時間形式の比較文章、画像、動画の形式別に偏りを確認する

数値の目標は、最初は置かずに2〜3か月ぶんの実績を貯めてから決めるのが現実的である。LinkedInは今回の指標の提供範囲や仕様を今後見直す可能性があるため、数字の定義が変わった場合は、期間を分けて比較する必要がある。

投稿者の属性で成果は変わる

営業担当、経営者、採用担当では、つながりの構成も読者の関心も違う。同じ指標でも、採用担当の投稿は求職者に届いて外側の閲覧が多く、営業担当の投稿は既存顧客に届いて内側が多い、といった差が出る。担当者間で数字を単純に比べず、投稿者ごとの前月比を見るほうが公平である。

KPI設計に保存・送信数を入れる方法

保存・送信数をKPIに入れる際は、他のSNSの指標体系との整合を取る必要がある。媒体横断のKPIの組み立て方は、SNSのKPI設計|媒体別の指標一覧とレポートの作り方で解説している。LinkedInに当てはめる場合は、次の手順が基本になる。

  1. 目的を決める:認知、見込み顧客の獲得、採用など、LinkedInで追う目的を1つに絞る
  2. 先行指標を置く:目的が認知なら外側の閲覧とフォロワー増加、見込み顧客の獲得なら保存・送信と投稿由来のフォロワーの属性を置く
  3. 結果指標とつなぐ:問い合わせ、資料請求、応募などの成果と、先行指標の月次推移を並べて動きを見る
  4. 比率で見る:保存数をインプレッションで割った保存率のように、投稿のリーチ規模に左右されない形にする

保存率や送信率に絶対的な基準はなく、アカウントの規模や業種によって大きく異なる。まずは自社の過去投稿の中央値を基準にし、それを上回る投稿の共通点を探すのが有効である。

企業ページの運用者が押さえておきたい注意点

  • 適用範囲は個人の分析が中心:今回の報道は「クリエイター向け」であり、企業ページの分析に同じ指標が入るかどうかは、公式発表では明らかになっていない
  • 日本での提供時期は不明:前述のとおり、地域や対象条件は示されていない
  • プロフィールの表示とプライバシー:投稿由来のフォロワーのプロフィールが見られる点は、自社の投稿を見るユーザーがどう扱われるかを意識する機会にもなる。個人情報の扱いは自社のルールに沿って運用する
  • 相関と因果を混同しない:保存が多い投稿が、そのまま成果につながるとは限らない。問い合わせ数など最終成果との関係を、数か月分のデータで見る

クリエイターとの協業を考えている企業は、LinkedInが進めている関連機能も参考になる。ブランド向けのクリエイター探索については、LinkedIn、ブランド向け「クリエイター発見」機能をベータ導入 B2Bキャンペーンの調達を効率化で扱っている。社外クリエイターを起用する場合も、今回の指標は投稿の質を評価する材料になる。

Creator Insightsの4つの新機能と、社員アドボカシーの測定指標を対応させた図解 Creator Insightsの新指標を、社員投稿の評価軸に対応させたイメージ

今日からできる準備

提供状況が不明な段階でも、次の準備は進められる。

  1. 社員アドボカシーに参加する担当者を決め、月次で数字を共有してもらう仕組みと同意の取り方を決める
  2. 過去3か月の投稿について、インプレッション、反応数、フォロワー増加を手元で記録しておく(新指標が使えるようになった時の比較基準になる)
  3. 投稿を「手順・事例・意見・告知」などの型に分類し、型ごとの成果を見られる形にする
  4. 自分のアカウントの分析画面に、投稿一覧や保存・送信の項目が出ているか定期的に見る

よくある質問

Creator Insightsは誰でも使えるのか

報道では、利用条件や提供地域は示されていない。個人プロフィールの分析画面に項目が表示されているかどうかで判断することになる。

保存・送信数が多いと配信が増えるのか

LinkedInが保存・送信数と配信順位の関係を公式に説明したとは報じられていない。数字は読者の行動を示す指標として使い、配信への影響は断定しないほうがよい。

企業ページの分析でも同じ指標が見られるのか

今回の発表では、企業ページへの適用には触れられていない。企業ページの分析は別の機能として提供されており、同じ指標が入るかどうかは公式発表では明らかになっていない。

他の社員の分析データを会社が見ることはできるか

個人の分析は投稿者本人の画面に表示されるものである。会社が把握するには、本人から共有してもらう形になる。共有の目的と範囲を明確にし、同意を得たうえで扱うべきである。

ネットワーク外の閲覧が多いことは良いことか

認知拡大が目的なら良い兆候である。ただし、見込み顧客に届いているかは別問題なので、投稿由来のフォロワーの属性や問い合わせ数と併せて判断する。

まとめ

LinkedInのCreator Insightsに追加された4つの機能は、投稿単位の比較、フォロワー獲得の質、読者の保存・共有行動、到達範囲の内外を見られるようにするものだ。社員アドボカシーに取り組む企業にとっては、いいね数に頼らない測定へ移るきっかけになる。

運用者が最初にやるべきことは、外側の閲覧比率と保存・送信数を、社員投稿の評価軸として設計しておくことである。提供範囲と仕様は今後変わる可能性があるため、日本のアカウントで使えるようになった時点で、自社の過去実績との比較基準をすぐに作れるようにしておきたい。

出典

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