TikTok「Brand Safety Center」をAPAC向けに公開|ブランド保護の手引きとAI安全ガイドの中身

misosil編集部

TikTokが2026年10月28日、シンガポールで開いた「APAC Responsible Media Forum」で、広告主向けのブランド保護の情報をまとめた「Brand Safety Center」と、手引き書の「Brand Protection Playbook」、広告での生成AIの使い方を示した「AI Safety Essentials」を公開した。オーストラリアの業界メディアB&Tなどが報じている。

名前から「新しい広告掲載先の設定機能が増えた」と受け取る人もいるが、報道を読むと実態は少し違う。海外メディアのContentGripは、インベントリフィルターやカテゴリ除外といった中心的なコントロールは、今回の公開より前から使えたと指摘している。今回の発表の中心は、既存の仕組みを一か所に集めた「情報拠点」と、使い方をまとめた資料だ。

この記事では、報じられている内容を整理し、日本の企業アカウントの担当者が何を確認すべきかを考える。広告を出す会社と、オーガニック投稿だけで運用する会社では、使える部分が違う。この線引きを、運用の視点から具体的に示す。

なお、日本向けの提供形態については、公式発表と今回の報道からは明らかになっていない。日本語で読めるのかどうか、日本市場にも同じ資料が用意されるのかは、各社の続報を待つ必要がある。

公開されたのは3つの資料とセンター

報道で共通している内容を表にまとめる。

名称内容
Brand Safety Centerブランド保護に関するTikTokの取り組みを集めた広告主向けの情報拠点
Brand Protection Playbook広告主と代理店向けに、安全性と適合性のツールの使い方を示した手引き。TikTok、LIVE、TikTok Shopでの問題の解決手順や、ソーシャルリスニングなどの事前対策を扱う
AI Safety Essentials広告で生成AIを責任を持って使うための指針。独立のコンサルティング会社Responsible Marketing Advisoryと作成

発表の場には、ブランド、代理店、パートナーの担当者およそ30人が出席したと伝えられている。TikTokのブランドセーフティ責任者であるFrancis Stones氏は、広告主の懸念は国や地域によって大きくは変わらないと述べ、「TikTokの責任を問うてほしい」と呼びかけたという。

「3つの層」で整理されたブランド保護

B&Tの報道によると、TikTokはブランド保護を次の3層で説明している。

層中身
安全な場所(Safe spaces)広告の基本的な安全基準に加え、インベントリフィルター、カテゴリ除外、Vertical Sensitivity、除外リストといったブランド側の調整機能。検証パートナーとしてDoubleVerify、Integral Ad Science、Zefrを挙げている
本物のつながり(Real connections)ブランドコンテンツのラベル表示
明確な開示(Clear disclosure)AI生成コンテンツのラベル表示

TikTokが説明するブランド保護の3層(安全な場所・本物のつながり・明確な開示)と、各層に対応する機能や資料を整理した図解 3層のうち、広告主が自分で設定できるのは1層目。2層目と3層目は、投稿の側で決まる。

TikTokの広告向けブランドセーフティのページ(英語版)によると、インベントリフィルターは、広告の掲載先を「Expanded」「Standard」「Limited」の3段階から選べる仕組みで、設定はTikTok Ads Managerで行う。機械学習でコンテンツを分類し、広告の隣接配置をリアルタイムで調整するという説明だ。同ページには、業界団体TAGの「Brand Safety Certified」などの認証を世界で取得していることも書かれている。

ブランド保護のツールとして挙げられたもの

発表では、すでにあるものを含め、次のツールも紹介された。

ツールできること
Market Scope Brand Perceptionビジネスセンター内で、ブランドについての会話の量と感情、よく出る話題を見る
著作権・商標の報告ツール侵害の疑いがあるコンテンツをブランドが報告する
TikTok Shop IP Protection Centre権利者が、侵害の疑いがある出品を報告する。違反が確認されれば削除と販売者への警告につながる
TikTok RealTikTok Shopのブランドが、販売者の認可状況の確認、不審な出品の通知、模倣品の削除を行う

このうち、Market Scope Brand Perceptionは、広告を出していなくても、ブランドへの言及の傾向を見るための道具として使える可能性がある。どのアカウントで使えるのか、日本でも表示されるのかは、公式発表からは明らかになっていないため、自社のビジネスセンターで確かめる必要がある。

数字で示された取り組み

TikTokが示した数字を、報道の範囲でまとめる。いずれもTikTok自身が公表した数字で、第三者が検証した数字ではない点に注意したい。

  • 2026年4月から6月に、APACの10市場で3,000万本を超える動画をコミュニティガイドライン違反で削除した。これは地域のアップロード全体の約0.3%にあたる
  • 削除の99.5%は、利用者の通報より前にTikTokが見つけたもので、91%は24時間以内に実施された
  • AI生成として表示された動画は、これまでに30億本を超える
  • 3,700万人を超えるクリエイターが、AI生成の表示ツールを使った
  • Ipsosの12市場の調査では、ブランドのスポンサーコンテンツを見た人は、見ていない人よりブランドを30%「本物らしい」、11%「信頼できる」と評価した

ここで気をつけたいのは、「削除した動画の割合」は、広告が危険な投稿の隣に出る確率ではないということだ。ブランドセーフティの本質は、広告が「どこに」「何の隣に」出るかにある。削除率の高さだけで、自社の広告の安全性が保証されるわけではない。

日本の企業アカウント運用者の視点

ここからは、公式発表では語られていない、運用の側から見た論点を整理する。以下は公開された内容から考えた運用上の注意であり、TikTokの見解ではない。

1. 広告を出すか、オーガニックだけかで、見るべき場所が違う

ブランドセーフティの調整機能(インベントリフィルターやカテゴリ除外)は、広告の掲載先を選ぶための機能だ。広告を出していないオーガニックのアカウントには、直接関係しない。

状況まず確認すること
広告を出しているAds Managerで、インベントリフィルターの段階と除外設定が自社の方針に合っているか。第三者の検証サービスを使うか
オーガニック投稿のみAI生成コンテンツの表示ルール、ブランドコンテンツのラベル、ブランドへの言及の傾向の見方、模倣品や著作権侵害の報告窓口
TikTok Shopに出店している模倣品の通報窓口、販売者の認可状況の確認

広告を出していない会社が「Brand Safety Centerは自社に関係がない」と思うのは早い。自社の名前や商品を使った模倣品、無断転載、AI生成の偽物は、広告の有無にかかわらず起こりうる。報告の窓口を知っているだけで、初動が早くなる。

2. AIの表示は「自社のルール」を先に決める

3層目の「明確な開示」は、AI生成コンテンツの表示だ。Stones氏は、広告主がオーガニック動画のAI表示を「過度に慎重に」捉えているかもしれない、とも述べたと報じられている。

企業アカウントでは、AIの使い方に濃淡がある。背景の補正や字幕の自動生成のように補助的なものから、人物や商品の映像そのものをAIで作るものまで幅が広い。どこからAI表示の対象にするのか、社内の基準が曖昧なままだと、投稿のたびに担当者が迷う。

基準づくりの参考として、他社のプラットフォームでも同じ流れが進んでいる。InstagramではInstagram「AI生成プロフィール」ラベル義務化、非表示なら「おすすめ」対象外にのように、AI生成の人物を前面に出すアカウントのラベル表示を事実上義務化した。YouTubeも、タイアップ動画の開示を巡る刷新を報じられている。詳しくはYouTube「ブランドコンテンツ」開示ラベルを刷新、未申告タイアップは自動検出へにまとめた。プラットフォームごとに用語や条件は違うが、「AIで作ったことを隠さない」という方向は共通している。自社の基準を先に作っておけば、どのプラットフォームの変更にも対応しやすい。

3. 「安全な場所」だけでは、炎上は防げない

ブランドセーフティのツールが守るのは、広告の掲載先と、ブランドを名乗る権利だ。自社の投稿に対するコメント欄の荒れや、担当者の不用意な発言といった問題は、これらのツールの範囲の外にある。

Brand Protection Playbookが扱う「ソーシャルリスニングやブランドの評判レポートによる事前対策」は、そうした問題の早期発見に関わる。ただし、手引きの具体的な内容は、今回の報道からは分からない。自社の運用では、コメントの監視体制、投稿前の確認、問題が起きた時の連絡経路を、ツールとは別に整えておく必要がある。体制づくりの考え方は、炎上対策の体制づくり|クライシスマネジメントで整える監視・初動・役割分担で整理している。

4. 資料が出たら、読む順番を決めておく

日本でBrand Safety CenterやPlaybookが日本語で読めるようになった時のために、確認の順番を決めておくと効率が良い。

  1. 自社が広告主か、オーガニックのみか、TikTok Shopの出店者かを整理する
  2. それぞれに当てはまる章だけを先に読む
  3. 設定が必要なものは、変更前の設定画面を記録してから変える
  4. 社内の運用ルール(AI表示、報告窓口、承認フロー)に反映する

よくある質問

Brand Safety Centerは新しい広告設定機能ですか

新しい設定機能ではなく、ブランド保護に関する情報をまとめた拠点です。ContentGripは、インベントリフィルターなどの主なコントロールは公開前から使えたと伝えています。

日本でも使えますか

日本向けの提供形態は、公式発表と今回の報道からは明らかになっていません。自社のTikTok for Businessの画面で、日本語の資料や該当ページが表示されるかを確かめてください。

広告を出していなくても関係がありますか

広告の掲載先を調整する機能は、広告を出す場合に関わります。一方で、AI生成コンテンツの表示、著作権や商標の侵害の報告、TikTok Shopの模倣品対策は、広告の有無にかかわらず関係する可能性があります。

削除された動画の数字は、広告の安全性を示しますか

示しません。3,000万本という数字はTikTokが公表した削除の実績で、広告が危険な投稿の隣に表示される確率を示すものではありません。広告の安全性は、掲載先の設定と第三者の検証で確かめる必要があります。

まとめ

  • TikTokは2026年10月28日、Brand Safety Center、Brand Protection Playbook、AI Safety EssentialsをAPAC向けに公開した
  • 主要な掲載先コントロールは公開前から使えたと報じられており、今回の中心は情報の集約と使い方の資料化
  • ブランド保護は「安全な場所」「本物のつながり」「明確な開示」の3層で説明されている
  • 日本向けの提供形態は、公式発表からは明らかになっていない
  • 企業アカウントは、広告主か、オーガニックのみか、TikTok Shopの出店者かを整理し、AI表示のルールと報告窓口を先に決めておくと備えになる

出典

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