LinkedIn、ブランド向け「クリエイター発見」機能をベータ導入 B2Bキャンペーンの調達を効率化
LinkedInがB2Bブランド向けにクリエイターを検索・審査できる新機能「Creator Discovery」をベータ導入。フィルター条件と企業アカウント運用への影響を解説。
LinkedInは2026年9月28日、ブランドがキャンペーン用のクリエイターを検索・審査できる新機能「Creator Discovery」のベータテストを開始したと報じられた。Social Media Todayが同日付で伝えたところによると、この機能はマーケターが「コンテンツタイプ」「クリエイターの業界」「職務機能」「オーディエンス統計」「Top Voices認定の有無」といった条件でクリエイターを絞り込める検索インフラで、一般提供は2027年初頭を予定しているという。B2Bマーケティングの現場で「良いクリエイターを見つけるのに時間がかかりすぎる」という声が根強い中、LinkedInが自社プラットフォーム上での調達プロセスを丸ごと囲い込みにいった格好だ。本稿では一次情報で裏取りできる範囲を明確にしたうえで、企業アカウント運用担当者が今の段階で押さえておくべき論点を整理する。
Creator Discoveryは何をベータテストしているのか
Social Media Todayおよび業界メディアwersmの報道を総合すると、Creator Discoveryは2026年6月10日に米国・カナダでローンチ済みの「Creator Marketplace」の検索機能を拡張するものだ。従来のCreator Marketplaceは、トピックやコンテンツの専門分野でクリエイターを検索し、フォロワー数やエンゲージメントを示す「クリエイターカード」、オーディエンス属性を示す「クリエイターインサイト」を閲覧できる仕組みだった。今回のCreator Discoveryは、これに次の5つの絞り込み条件を新たに加える。
- コンテンツタイプ(投稿・動画・ニュースレターなど、クリエイターが主に発信している形式)
- クリエイターの業界(所属または専門とする業界カテゴリ)
- 職務機能(現職・過去の役職から推定される専門領域)
- オーディエンス統計(フォロワーの役職層・業界構成などの属性データ)
- Top Voices認定の有無(LinkedInが選定する著名投稿者としての認定ステータス)
wersmの報道では、Creator Discoveryは単体の検索ツールではなく「キャンペーンインフラ」として位置づけられており、既存の広告商品と接続される設計だとされている。具体的には、社員や専門家の投稿を広告として増幅する「Thought Leader Ads」、承認済みクリエイターの動画にプリロール広告を配置する「BrandLink」、イベントやショーへの露出を提供する「Top Voices 360」との連携が想定されているという。つまりCreator Discoveryは「クリエイターを探す画面」であると同時に、探した相手をそのままLinkedIn上の広告商品に流し込むための入り口としても設計されている。
Creator Marketplaceの基本検索に、コンテンツタイプ・業界・職務機能・オーディエンス統計・Top Voices認定という5条件の絞り込みが加わった
数字で見る「なぜ今なのか」 ― B2B購買行動とクリエイターの関係
MediaPostの報道によれば、LinkedInは今回の発表にあわせて次のような調査数値を示している。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| クリエイターとの協働が消費者の信頼・信用の向上につながると回答したB2Bマーケターの割合 | 82% |
| 購買プロセスの初期段階でクリエイターによる調査・洞察を参考にするB2B購買者の割合 | 63% |
| 意思決定の検証段階でクリエイターの発信を参照する購買者の割合 | 半数超 |
この数字が示しているのは、B2Bの購買者がすでに「クリエイターの発信を参考にして意思決定している」という実態が先行し、ブランド側の調達プロセスがそれに追いついていないという構図だ。Social Media Todayの報道でも、LinkedIn側のコメントとして「信頼はB2Bの購買決定を左右する重要な要因であり、バイヤーは単なる製品ピッチではなく、実経験を持つ専門家からの検証を求めている」という趣旨の説明がなされている。BtoC向けのInstagramやTikTokのクリエイターマーケットプレイスがフォロワー数やエンゲージメント率を主軸に検索させるのに対し、LinkedInが「職務機能」や「業界」という属性を検索軸の中心に据えているのは、フォロワーの多さよりも「その業界の実務者から見て説得力があるか」を重視するB2B特有の購買心理を反映した設計だと読み取れる。
Creator Marketplaceローンチからの半年間で何が積み上がったか
Creator Discoveryは唐突に登場した機能ではなく、2026年6月のCreator Marketplaceローンチ以降、LinkedInが企業の信頼性まわりで積み重ねてきた一連の施策の延長線上にある。時系列で整理すると次のようになる。
| 時期 | 施策 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 2026年6月10日 | Creator Marketplaceを米国・カナダでローンチ | ブランドとクリエイターをつなぐ基盤を新設 |
| 2026年7月30日 | 「Seems like AI slop」通報ボタンを導入 | 低品質なAI生成投稿の閲覧を抑制 |
| 2026年8月 | 生成AIによる書き換え機能「Enhance your post」を廃止 | AIによる文章の均質化に歯止め |
| 2026年9月19日 | つながり限定フィード「Networkタブ」を試験導入 | 面識のある相手同士のやり取りを優先表示 |
| 2026年9月20日 | 校正AI「Post Proofreader」を提供開始 | 生成ではなく校正へAIの役割を限定 |
| 2026年9月23日 | 「Vouch」機能・虚偽従業員削除機能を追加 | 職歴という事実情報の真正性を担保 |
| 2026年9月28日 | Creator Discoveryをベータ導入(本稿) | クリエイターの調達・審査プロセスを効率化 |
こうして並べると、LinkedInが2026年後半に一貫して追っているテーマは「本物であることの証明」だと分かる。投稿の中身(AIスロップ対策)、経歴の真正性ときて、今回はその延長として「信頼できる発信者を、企業が効率よく見つけて起用できる仕組み」に手を付けた。個人の真正性を担保する施策と、その個人を企業が活用しやすくする施策が、同じ四半期の中でセットで進んでいる点は見逃せない。経歴の真正性を担保する施策の詳細は、LinkedIn、元同僚が職歴を証言する「Vouch」機能と虚偽従業員の削除機能を追加で扱っているので、あわせて参照してほしい。
【企業アカウント運用者向け】「探す側」ではなく「見つかる側」としての備え
ここまでの報道は軒並み「ブランドがどうクリエイターを探すか」という広告主目線で語られている。だが企業アカウント運用担当者にとって実務的に重要なのは、むしろ逆の視点――自社の役員や専門職の社員が、今回のフィルター条件によって「見つかる側」になった場合にどう振る舞うべきか、という論点だ。他の報道記事はこの角度にほぼ触れていないため、ここで独自に整理しておきたい。
まず押さえておきたいのは、Creator Discoveryの検索軸が「コンテンツタイプ」「業界」「職務機能」「オーディエンス統計」「Top Voices認定」の5つに固定されている点だ。これはつまり、社員個人のプロフィール上でこの5項目に相当する情報が曖昧だったり古いままだったりすると、そもそも検索結果の絞り込み対象に入らない可能性があるということを意味する。異動や昇進があっても現職の職務機能欄を更新していない社員は多いはずだが、Creator Discoveryが本格稼働すれば、この更新漏れが「本来なら声がかかったはずの案件を逃す」という機会損失に直結しかねない。
次に、コンテンツタイプの一貫性という論点がある。投稿・動画・ニュースレターのどれを主軸にしているかがフィルター条件になるということは、社員個人アカウントの発信形式を場当たり的に変えるのではなく、一定期間は同じ形式で継続発信したほうが、検索エンジン的な意味での「分類のされやすさ」が上がると推測できる。自社の広報戦略として、どの社員にどの形式(テキスト投稿中心か、動画中心か)を担ってもらうかを事前に割り振っておく設計は、Creator Discovery時代の新しい準備事項になるだろう。
最後に、Top Voices認定というステータス自体が、今後は「個人の名誉」だけでなく「企業がブランドキャンペーンの声をかけやすい相手かどうか」を左右する実利的な指標になっていく可能性がある。自社の役員や専門職を計画的にTop Voices認定へと育てていく取り組みは、これまで単なるパーソナルブランディング施策として語られがちだったが、Creator Discoveryの一般提供が始まる2027年初頭を見据えると、他社からの協業オファーを受け取る導線としての意味合いが加わることになる。企業アカウント運用担当者は、自社の発信を「読んでもらうこと」だけでなく「検索で見つけてもらうための属性整備」としても捉え直す時期に来ている。
実務担当者が今すぐ確認すべき3つのポイント
一般提供が2027年初頭とまだ先であることを踏まえ、現時点で企業アカウント運用担当者が着手できることを3点に整理する。
1つ目は、社員個人アカウントの職務機能・業界情報の棚卸しだ。異動・昇進を反映できていないプロフィールがないか、四半期に一度は確認する運用をルール化しておくと、Creator Discoveryが本格稼働した際にすぐ対応できる。
2つ目は、社員の発信フォーマットの整理だ。誰がテキスト投稿を主軸にし、誰が動画発信を担うのかをあらかじめ割り振っておくことで、コンテンツタイプによる分類の恩恵を受けやすくなる。
3つ目は、自社の発信を「AIスロップ」と誤認されない品質で保つことだ。LinkedInは2026年後半、投稿の真正性・品質に関する施策を連続して打ち出しており、LinkedIn、誤字脱字だけを直す校正AI「Post Proofreader」を提供開始 Premium限定で『投稿を強化』を置き換えやLinkedIn「Networkタブ」試験導入、つながり限定フィードで企業アカウントの投稿はどう扱われるかからも分かる通り、プラットフォーム全体が「質の低い発信は埋もれやすくなる」方向に設計を寄せている。Creator Discoveryの検索対象として選ばれるには、そもそも普段の発信品質が土台になる点を見落としてはならない。
よくある質問
Q. Creator Discoveryはいつから誰でも使えますか。 A. 報道によれば、現時点はベータテストの段階で、一般提供は2027年初頭を予定しているとされる。具体的な対象国や対象アカウントの範囲は、本稿執筆時点の報道では明らかにされていない。
Q. Creator Marketplaceとは別の機能ですか。 A. 別機能というより、2026年6月にローンチ済みのCreator Marketplaceの検索機能を拡張するものと位置づけられている。基本の検索・プロフィール閲覧の仕組みはCreator Marketplaceのままで、そこに業界・職務機能・オーディエンス統計・Top Voices認定という絞り込み条件が新たに加わる形だ。
Q. 日本のアカウントもCreator Discoveryの検索対象に含まれますか。 A. 対象地域について、現時点の報道に明記はない。Creator Marketplace自体が2026年6月時点では米国・カナダ限定でローンチされた経緯があるため、日本のアカウントがいつから検索対象・検索する側の双方に含まれるかは、今後の続報を待つ必要がある。
Q. 無料アカウントの社員でもCreator Discoveryに表示される可能性はありますか。 A. この点についても本稿執筆時点の一次情報に明記はない。Creator Marketplaceへの登録自体が「対象となるクリエイター」向けとされてきた経緯を踏まえると、一定の条件を満たしたアカウントに限定される可能性はあるが、断定はできない。
まとめ
LinkedInは2026年9月28日、ブランド向けにクリエイターを検索・審査できる「Creator Discovery」のベータテストを開始したと報じられた。コンテンツタイプ・業界・職務機能・オーディエンス統計・Top Voices認定という5つの条件で絞り込める検索インフラで、Thought Leader AdsやBrandLinkといった既存の広告商品と接続される設計だという。B2Bマーケターの82%がクリエイター協働を信頼向上の手段と見なし、購買者の63%が調査段階でクリエイターの発信を参考にしているという数字が示す通り、この動きは単発の機能追加ではなく、B2Bの購買行動の実態にLinkedInの商品設計が追いついてきた結果だと捉えるべきだろう。企業アカウント運用担当者にとっては、広告主として「探す側」に回る準備だけでなく、自社の社員が「見つかる側」として適切に検索対象へ含まれるよう、プロフィール情報と発信フォーマットを今のうちに整えておく価値がある。一般提供までまだ猶予がある今こそ、着手のタイミングだ。
出典
- LinkedIn tests advanced creator discovery to power brand campaigns - Social Media Today (2026年9月28日)
- LinkedIn Tests Creator Discovery for B2B Campaigns - wersm
- MediaDailyNews: LinkedIn Tests New Way For Brands To Forge Creator Connections - MediaPost
- LinkedIn launches its own Creator Marketplace - Social Media Today (2026年6月10日)
- LinkedIn、元同僚が職歴を証言する「Vouch」機能と虚偽従業員の削除機能を追加(misosil)
- LinkedIn、誤字脱字だけを直す校正AI「Post Proofreader」を提供開始 Premium限定で『投稿を強化』を置き換え(misosil)
- LinkedIn「Networkタブ」試験導入、つながり限定フィードで企業アカウントの投稿はどう扱われるか(misosil)
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