LinkedIn、誤字脱字だけを直す校正AI「Post Proofreader」を提供開始 Premium限定で『投稿を強化』を置き換え

misosil編集部

LinkedInは2026年9月20日、投稿の下書きから誤字脱字や文法上の誤りだけを検出して直す校正機能「Post Proofreader」をPremium会員向けに提供開始したと報じられた。Social Media Todayが同日付で伝えたところによると、この機能は同社が2026年8月に廃止した生成AIによる文章書き換え機能「Enhance your post(投稿を強化)」の後継にあたる。単なる機能の入れ替えではなく、「AIに文章を作らせる」から「AIに誤りだけを直させる」への方針転換を意味する動きとして注目したい。

misosilは2026年8月25日の記事LinkedIn「AIスロップらしい」通報ボタンを導入。投稿者への非公開通知や『Enhance your post』廃止もで、Enhance your postの廃止と、後継となる校正機能が「提供される予定」であることを速報した。それから約1カ月を経て、その校正機能が実際に「Post Proofreader」という名称で正式ローンチされたことが一次情報で確認できたため、本稿では仕様の詳細と企業アカウント運用への影響を整理する。

Post Proofreaderの仕様 ― 「書き換え」ではなく「提案」

Social Media Todayによれば、Post Proofreaderは投稿の下書きに対して修正候補を提示し、ユーザーが投稿を公開する前にその変更内容を確認できる機能だ。修正箇所は「インライン変更履歴(inline change tracking)」という形式で表示され、文書校閲ツールのように、どこがどう変わるのかを見ながら1件ずつ適用するかどうかを判断できるという。記事は「LinkedInはこの処理を、AIで投稿を作り直す手段としてではなく、あえて『校正』と呼ぶことで再ブランディングしようとしている」という趣旨で紹介しており、機能の名称自体に、生成AIへの警戒感を和らげたいLinkedIn側の意図が表れている。

報道では、Premium会員は3種類の校正オプションから選べるとされる。ただし、それぞれのオプションが「修正の積極度」なのか「文体の丁寧さ」なのかといった具体的な違いまでは、現時点の報道では明らかにされていない。LinkedIn Helpのサポートページ(回答ID: a16661057、a16649157)にも同機能の案内があるが、いずれも検索エンジンのクロールを拒否する設定になっており、外部から本文全体を直接確認することはできなかった。そのため本稿ではSocial Media Todayの報道を一次情報として扱い、断定できない仕様については「〜とされる」「報じられている」という表現にとどめている。

対象範囲についても、報道の原文は「eligible Premium members(対象となるPremium会員)」という表現を使っており、Premium会員全員に即座に行き渡ったのか、それとも段階的なロールアウトなのかは明言されていない。全世界一斉展開ではなく、地域や言語によって提供時期にばらつきが出る可能性は想定しておいたほうがよいだろう。

LinkedInのEnhance your postからPost Proofreaderへの機能移行を示す比較図 生成型のリライトから、誤りの指摘と個別適用に絞った校正支援へと役割が変わった

「Enhance your post」との違いを整理する

廃止された「Enhance your post」は、ユーザーが書いた下書きをAIが丸ごと書き直し、より整った文章に変換する生成型の機能だった。米メディアInc.は、この機能自体がAIっぽい定型文を大量生産する一因になっていたと指摘しており、LinkedInは2026年8月にこの機能を廃止していた。

Post Proofreaderはこれとは設計思想が異なる。両者の違いを整理すると次のようになる。

項目Enhance your post(旧)Post Proofreader(新)
位置づけ生成AIによる文章の書き換え誤字脱字・文法の校正
介入の範囲語彙・構成・トーンを含めた全文提案表記・文法の誤りに限定した修正提案
適用方法書き換え案をワンクリックで反映インライン変更履歴を1件ずつ確認して適用
提供対象提供当時の対象範囲は非公開のまま廃止Premium会員(対象となる会員から順次)
経緯AIっぽい定型文の量産という批判を受け2026年8月に廃止上記の後継として2026年9月20日に提供開始

もっとも重要な違いは、「声(トーン)」を保つかどうかだ。Enhance your postは文章の個性ごと別の表現に置き換えてしまう設計だったのに対し、Post Proofreaderは書き手の言い回しや語順を極力残したまま、誤りだけを直す方向に振り切っている。これは、AIによる文章の均質化――「みんな同じような整った投稿になる」現象――にLinkedIn自身がブレーキをかけた形だと言える。

AIスロップ対策という一連の流れの中に位置づく

Post Proofreaderの登場は、単発の機能追加として見るよりも、LinkedInが2026年夏から続けてきたAI生成コンテンツ対策の延長として捉えたほうが実態に近い。同社は2026年7月30日に、投稿やコメントに対して「Seems like AI slop(AIスロップらしい)」と通報できるボタンを導入しており、Social Media Todayの今回の記事でも、このボタンが導入から3週間足らずで100万回以上使われたという数字が改めて引き合いに出されている。通報ボタンの詳しい経緯や、企業アカウントが実務上どう対応すべきかは、LinkedIn「AIスロップらしい」通報ボタンを導入。投稿者への非公開通知や『Enhance your post』廃止もで詳しく扱っているので、あわせて参照してほしい。

つまりLinkedInは、(1)AI生成コンテンツをユーザー自身に通報させる仕組みと、(2)自社のAI執筆支援機能そのものを「生成」から「校正」へ後退させる仕組みを、ほぼ同時期に走らせている。プラットフォーム側が自らの生成AI機能に急ブレーキをかけるのは、SNSプラットフォームとしては珍しい判断だ。広告や利用時間の観点だけで見れば、投稿数を増やすAI執筆支援機能はむしろ歓迎されそうなものだが、LinkedIn上でのAI生成コンテンツへの反発がそれだけ強かったことの裏返しでもある。

なお、LinkedInは同時期に投稿機能以外の領域でもAI活用を進めており、たとえばLinkedIn、ライブイベント動画からAIが見どころを自動抽出する「推奨クリップ」機能を追加で紹介した動画のハイライト自動抽出機能のように、「AIに新しいコンテンツを作らせる」領域には引き続き投資を続けている。テキスト投稿という、なりすましや定型文批判が特に集中しやすい領域でだけ、生成型AIの提供に慎重になっているという整理が実態に近いだろう。

【企業アカウント運用者向け】Post Proofreaderをどう使うべきか

企業の公式アカウントやコーポレートインフルエンサー施策でLinkedInを運用している担当者にとって、今回の変更は実務上いくつかの示唆がある。

第一に、Post Proofreaderは「下書きを作る」機能ではなく「下書きを直す」機能だという点を運用フローに反映する必要がある。これまでEnhance your postを使って社員の投稿を手早く整えていたチームは、同様の使い方ができなくなる。投稿の骨子(何を伝えたいか、どんなエピソードを入れるか)は依然として人間が書く必要があり、AIが担うのは表記ミスの検出だけになる。「AIに書かせてから軽く手直しする」運用から、「人間が書いてからAIに誤字だけ拾わせる」運用への逆戻りだと考えるとわかりやすい。

第二に、Premium限定という制約は、企業アカウントの運用体制に地味に効いてくる。複数の担当者が交代で投稿する体制を取っている企業では、投稿担当者全員がPremiumに加入しているとは限らない。Post Proofreaderを標準の校正フローに組み込みたい場合、対象者のPremium加入状況を棚卸しする必要が出てくるだろう。

第三に、「声(トーン)を変えない」という設計思想は、ブランドボイスやパーソナルブランディングを重視する企業にとって歓迎できる変化だ。これまで生成AIでリライトした投稿が「誰が書いても同じような口調になる」と指摘されてきた背景を踏まえると、Post Proofreaderは最低限の体裁は整えつつ、書き手ごとの個性を残せる可能性が高い。ただし、修正提案をインラインで1件ずつ確認する仕様である以上、投稿を大量生産している運用チームでは、確認作業そのものが新たな工数として発生する点は見落とせない。「AIが直してくれるから楽になる」のではなく、「AIが提案し、人間が最終判断する」工程が1つ増えると捉えておくのが実態に近い。

最後に、LinkedIn運用全般のリスクという観点では、今回の一連の変更は「AIっぽさ」がアカウントの信頼性やエンゲージメントに直接影響する時代に入ったことを示している。企業アカウント運用に伴うリスクや炎上事例への備え方はLinkedInは危険?企業アカウント運用のリスクと対策で幅広く整理しているので、投稿ガイドラインの見直しにあわせて確認しておくとよい。

よくある質問

Q. Post Proofreaderは無料会員でも使えますか。 A. 報道によれば、現時点では「対象となるPremium会員」向けの機能とされている。無料会員への展開が予定されているかどうかは、現時点の報道からは確認できない。

Q. Enhance your postはもう完全に使えなくなったのですか。 A. Social Media Todayの報道では、Enhance your postは「先月(2026年8月)に廃止された」既存の機能として扱われている。Post Proofreaderはその後継として案内されており、旧機能への切り戻しについての言及はない。

Q. Post Proofreaderは日本語の投稿にも対応していますか。 A. 対応言語について、現時点の一次情報では明記されていない。LinkedInの多くの新機能は英語圏から先行展開されることが多いため、日本語での提供状況は今後の続報や実機での検証を待つ必要がある。

Q. 校正提案を無視して元の文章のまま投稿することはできますか。 A. 報道の説明によれば、修正候補はインライン変更履歴として提示され、ユーザーが1件ずつ適用するかどうかを選べる仕組みとされている。提案をすべて却下してそのまま投稿することも可能と考えられるが、この点の細部は一次情報でも明言されていない。

まとめ

LinkedInは2026年9月20日、生成AIによる文章書き換え機能「Enhance your post」を廃止した約1カ月後に、その後継として誤字脱字・文法のみを校正する「Post Proofreader」をPremium会員向けに提供開始した。両者の違いは、AIが文章を作り直すか、誤りだけを指摘して人間の判断に委ねるかという一点に集約される。この変更は、7月に導入された「AIスロップ」通報ボタンと合わせて見ると、LinkedInがテキスト投稿における生成AIの関与を意図的に縮小させている流れの一部だと理解できる。企業アカウント運用者にとっては、AIに文章作成そのものを任せる発想から、人間が書いた文章の精度をAIに補ってもらう発想への切り替えが求められる局面だと言えるだろう。対象範囲や具体的なオプション内容など不明点も残るため、実際に自社のPremiumアカウントで表示が始まった際には、仕様の細部を改めて確認することをおすすめする。

出典

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