LinkedIn、元同僚が職歴を証言する「Vouch」機能と虚偽従業員の削除機能を追加
LinkedInが元同僚同士で在籍歴を証言し合う新機能と、企業ページ管理者が虚偽の従業員表示を削除できる機能を追加。AIによる経歴詐称対策の背景と企業アカウント運用への影響を解説。
LinkedInは2026年9月23日、元同僚同士が互いの在籍歴を証言し合う新機能と、企業ページの管理者が虚偽の従業員表示を削除できる機能を追加したと発表した。Social Media Todayと米TechCrunchが同日付で報じたところによると、発表したのはLinkedIn製品担当バイスプレジデントのオスカー・ロドリゲス氏で、本人がLinkedIn上に投稿した記事が一次情報にあたる。生成AIによって経歴やプロフィール写真の偽造が容易になったことを背景に、「誰が本当にその会社で働いていたか」をプラットフォーム側で裏付ける仕組みを強化した格好だ。
新機能「Vouch」――元同僚が在籍歴を証言する仕組み
TechCrunchの報道によれば、新機能は「Yes, I worked with this person during this time(はい、この人物とはこの期間、一緒に働いていました)」という一文で在籍の事実だけを確認し合う仕組みで、通常の推薦文(レコメンデーション)のようにスキルや人柄を評価するものではない。証言できる側にも条件があり、次の3点をすべて満たす必要があるとされる。
- 証言者自身が認証済みプロフィールを保有していること
- 証言対象の人物と1年以上前からLinkedIn上でつながっていること
- 証言者の自身のアカウントで2段階認証を有効にしていること
十分な数の証言が集まると、対象者のプロフィールに検証済みを示すバッジが表示される。ただし本人の希望でこのバッジ表示を非表示にすることも可能だと報じられている。証言の主体を元同僚という「その場に居合わせた人間」に限定し、なりすましアカウントからの偽の証言が積み上がりにくい設計にしている点が特徴だ。
虚偽従業員の削除機能――使えるのは検証済み企業ページだけ
もう一つの柱が、企業ページ側から虚偽の在籍表示を削除できる機能だ。TechCrunchの報道によると、ページ管理者は自社での勤務実績がないにもかかわらず在籍を主張しているプロフィールを手動で削除できる。削除された場合、対象者のプロフィールから企業ページへのリンクは失われ、その職歴は「認証済み」として表示されなくなる。一方で、プロフィール本体の記載(会社名のテキスト)自体が強制的に消去されるわけではない点には注意が必要だ。
この削除機能を使えるのは「検証済み企業ページ」に限られる。あわせてLinkedInは、新しくページとの関連付け(在籍表示)を行う際に、会社のメールドメインでの本人確認を管理者側で必須化できるオプションもテスト中だと報じられている。つまり今回のアップデートは、個人の証言(Vouch)と、企業側のドメイン検証という2つの経路から、在籍情報の信頼性を二重に担保しようとする設計だと整理できる。
元同僚による相互証言(Vouch)と、企業ページ側のドメイン検証という2つの経路で在籍情報を裏付ける
なぜ今なのか――「真正性」を数字で語り始めたLinkedIn
ロドリゲス氏はLinkedIn上の投稿で「authenticity will be the single most valuable currency on the internet(真正性こそが、インターネット上で最も価値のある通貨になる)」とコメントしている。TechCrunchはこの発言を、生成AIによって経歴の詐称や偽プロフィールの作成が「これまでになく安価かつ容易になった(faking credibility has never been cheaper or easier)」という問題意識の裏返しだと位置づけて報じている。
同氏はあわせて、認証済みプロフィールがそうでないプロフィールに比べて「投稿の閲覧数が平均50%多く、インプレッションは90%多い」という数値を明らかにした。LinkedInはこれまでに1億1,500万人のユーザーと70万社を超える企業を認証済みとしており、認証の有無が単なる安心材料にとどまらず、実際のリーチにも差を生む要素として同社が位置づけていることがうかがえる。対象範囲については、正社員としての在籍確認が中心で、契約社員や現場スタッフ向けには別途確認手段を用意するとされているが、全面展開の具体的な時期は本稿執筆時点の報道では明らかにされていない。
LinkedInが2026年に積み重ねてきた「信頼性」関連の施策
今回の発表は単発の機能追加ではなく、LinkedInが2026年に入ってから継続してきた一連の施策の延長線上にある。時系列で整理すると次のようになる。
| 時期 | 施策 | 狙い |
|---|---|---|
| 2026年7月30日 | 「Seems like AI slop」通報ボタンを導入 | AI生成らしい低品質投稿の閲覧を抑制 |
| 2026年8月 | 生成AIによる書き換え機能「Enhance your post」を廃止 | AIによる文章の均質化に歯止め |
| 2026年9月20日 | 誤字脱字のみを直す校正AI「Post Proofreader」を提供開始 | 生成ではなく校正へ役割を限定 |
| 2026年9月19日 | つながり限定フィード「Networkタブ」を試験導入 | 面識のある相手同士のやり取りを優先表示 |
| 2026年9月23日 | 「Vouch」機能と虚偽従業員削除機能を追加(本稿) | 職歴という事実情報の真正性を担保 |
投稿の中身(AIスロップ・文章生成)、フィードの構造(Networkタブ)ときて、今回は経歴という「プロフィールの土台」そのものに手を付けた形だ。対象領域を段階的に広げながら、「本物の人間同士のやり取り」という同じ方向性を一貫して追っていることが読み取れる。LinkedIn「AIスロップらしい」通報ボタンを導入。投稿者への非公開通知や『Enhance your post』廃止も、LinkedIn「Networkタブ」試験導入、つながり限定フィードで企業アカウントの投稿はどう扱われるかでもこの流れを詳しく扱っているので、あわせて参照してほしい。
【企業アカウント運用者向け】元従業員の虚偽表示は「放置するリスク」になる
ここが今回のアップデートで実務に一番効いてくる部分だ。これまで、退職者や無関係の第三者が自社名を勝手に在籍先として名乗ることは、企業ページ側から積極的に排除する手段が乏しく、事実上「見て見ぬふり」になりがちだった。今回の削除機能は、この状態を「対応できるのに対応していない」というリスクに変える。
具体的に押さえておきたいのは次の3点だ。
1つ目は、削除機能を使うには自社ページが「検証済み企業ページ」である必要がある点だ。まだ企業ページの検証を済ませていない場合、この機能自体が使えない。まずは自社ページの検証状況を確認するところから始める必要がある。
2つ目は、メールドメインによる在籍確認の必須化オプションだ。これを有効にしておけば、そもそも虚偽の在籍表示が新規に登録されにくくなる。事後に見つけて削除する対応と、事前に登録自体を防ぐ対応の両方を組み合わせるのが現実的な運用になる。
3つ目は、退職者アカウントの棚卸しとの関係だ。LinkedInは危険?企業アカウント運用のリスクと対策では、退職者に残ったページ管理者権限が見落とされやすいリスクとして紹介したが、今回の虚偽従業員削除機能は、その裏返しにあたる「退職済みなのに在籍を名乗り続けるプロフィール」への対処手段になる。人事の退職者対応フローに、LinkedInの在籍表示の確認を1項目加えておくと、採用担当者や取引先が誤った情報に基づいて判断してしまう事態を防ぎやすい。
よくある質問
Q. Vouchによる証言は誰でもできますか。 A. 報道によれば、証言者自身が認証済みプロフィールを持ち、対象者と1年以上前からつながっており、かつ自分のアカウントで2段階認証を有効にしていることが条件とされている。誰でも無条件に証言できるわけではない。
Q. 虚偽従業員削除機能はすべての企業ページで使えますか。 A. 使えない。報道では「検証済み企業ページ」に限定されるとされており、自社ページがまだ検証を済ませていない場合は利用できない。
Q. 削除されたプロフィールの経歴表記そのものも消えますか。 A. 消えるのはページとのリンクと「認証済み」という表示のみで、プロフィール上の会社名のテキスト自体が強制的に削除されるわけではないと報じられている。
Q. 日本語のプロフィールやページでも同様に使えますか。 A. 対応言語や地域ごとの展開スケジュールについて、本稿執筆時点の一次情報に明記はない。段階的な展開が想定されるため、自社アカウントの管理画面で実際に機能が表示されるかを個別に確認する必要がある。
まとめ
LinkedInは2026年9月23日、元同僚同士が在籍歴を証言し合う「Vouch」機能と、検証済み企業ページが虚偽の従業員表示を削除できる機能を追加した。背景には、生成AIによって経歴詐称や偽プロフィールの作成が容易になったという課題意識があり、認証済みプロフィールが投稿閲覧数で50%、インプレッションで90%上回るという数字を示すことで、真正性を「実利のある指標」として打ち出している。7月のAIスロップ通報ボタンから続く一連の信頼性施策の一つとして捉えると、LinkedInが投稿の中身・フィードの構造・経歴の真正性という3つの層で同時にテコ入れを進めていることが見えてくる。企業アカウント運用者にとっては、自社ページの検証状況とメールドメイン確認オプションを見直す良い機会だと言える。
出典
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