X、サードパーティ向けライブ配信APIをゼロから再構築 チャットモデレーション機能も追加

misosil編集部

Xは2026年9月23日、サードパーティの開発者向けに提供しているライブ配信APIを刷新したと発表した。X公式アカウント「X Developers」の投稿と、これを報じたSocial Media Todayによると、新しいAPIは「ゼロから再構築された(rebuilt from the ground up)」もので、機能が大幅に拡張されている。従来はXアプリ内で完結する配信ツール「Live Studio」の強化が続いていたが、今回のアップデートは、外部の動画配信プラットフォームやアプリがXでのライブ配信を組み込みやすくするための、開発者向けの土台整備にあたる。

何が変わったのか――刷新されたAPIの4つの機能

Social Media Todayの報道と、X開発者向けドキュメント(docs.x.com)を突き合わせると、今回のアップデートで整備されたのは主に次の4つの機能だ。

  • 永続的なRTMPストリームの管理:配信用のRTMP接続を継続的に管理できる仕組み
  • 放送の作成・公開・監視:ライブ配信のライフサイクル(開始から終了まで)をAPI経由で制御
  • 予約配信のスケジュール設定:配信開始日時をあらかじめ指定できる機能
  • ライブチャットの読み取り・返信・モデレーション:視聴者からのチャットメッセージの取得、返信の送信、迷惑行為への対処

これらは個々に見れば目新しい機能ではないが、「サードパーティの外部サービスがAPI経由でまとめて扱えるようになった」点に今回の刷新の意味がある。これまで外部の配信プラットフォームがXとの連携機能を作り込む場合、断片的な仕様に頼らざるを得なかった領域を、まとまった形で提供し直したという位置づけだ。

技術仕様――エンタープライズプラン限定、チャットは最大20名で分担管理

X開発者向けドキュメントのアップデート履歴(xdevplatform/docsリポジトリの変更履歴)によれば、今回のLivestream APIはエンタープライズプランの契約者向けに提供される。個人開発者や小規模なアプリが無条件で使える機能ではなく、大手の配信プラットフォームや企業システムとの連携を主眼にしたAPIであることがうかがえる。

チャット機能の技術仕様も具体的に公開されている。ライブチャットは「X Activity API(XAA)」というリアルタイムイベント配信の仕組みを通じて扱われ、配信者が「broadcast.chat」イベントを一度サブスクライブするだけで、その配信者が行うすべての配信のチャットメッセージがwebhook経由で自動的にプッシュ配信される。新しい配信が始まるたびに再登録する必要がない設計だ。認証にはOAuth 2.0の認可コードフロー(PKCE付き)を使い、「broadcast.read」スコープを持つ配信者本人のアクセストークンが要求される。配信終了後は「チャット履歴の取得」エンドポイントで過去のやり取りを取得することも可能だ。

モデレーション機能では、POST・GET・DELETE /2/broadcasts/chat/moderatorsという専用エンドポイントが新設され、配信者1人につき最大20名までモデレーターを委任できるようになった。委任されたモデレーターは、視聴者のミュートやチャットメッセージの削除といった対応をAPI経由で行える。大規模な配信になるほど、運営側の人力だけでは荒らしコメントへの対応が追いつかなくなりやすいが、モデレーション業務を複数人・複数ツールに分散させる余地ができたことになる。

Xのサードパーティ向けライブ配信APIの技術仕様を整理した図解。RTMP管理・予約配信・チャットAPI・モデレーターの委任という4つの機能ブロックの関係を示す エンタープライズプラン契約者が、RTMP・予約・チャット・モデレーションの4系統をAPI経由でまとめて扱える

料金や導入時期など、現時点でわかっていないこと

一次情報として参照したSocial Media Todayの記事とX開発者向けドキュメントのいずれにも、エンタープライズプランの具体的な料金や、個別のサードパーティサービスがいつから対応版を出すのかという時期の記載は見当たらなかった。過去にXの開発者向けAPIが複数の料金ティアに再編された経緯を踏まえると、既存のエンタープライズ契約者に自動的に含まれる機能なのか、それとも追加の申請や個別契約が必要になるのかも、現時点の一次情報だけでは判別できない。この点は、自社が利用中の配信ベンダー経由で問い合わせるか、続報を待って確認する必要がある。

「Live Studio」とは何が違うのか

Xは2026年7月にも、クリエイター個人向けのライブ配信管理ツール「Live Studio」をCreator Studio内に追加している。X「Live Studio(ライブスタジオ)」とは?クリエイタースタジオに統合された新ライブ配信ツールを解説で詳しく扱った通り、Live StudioはXアプリの管理画面から直接RTMP接続やチャット管理を行う、いわば「Xが用意した配信者向けの完成品ツール」だ。

これに対して今回刷新されたLivestream APIは、Xアプリの外側にいるサードパーティの開発者・プラットフォームがAPI経由で同種の機能を自社サービスに組み込むための土台にあたる。利用者から見た体験は、Live Studioが「Xの管理画面を直接操作する」のに対し、今回のAPIは「普段使っている外部の配信ツールやプラットフォームの中でXへの配信・チャット対応が完結する」形になる可能性がある。両者は競合するものではなく、個人クリエイター向けの入口(Live Studio)と、企業・プラットフォーム向けの裏側の配管(Livestream API)という役割分担で理解するのが実態に近い。

【企業アカウント運用者向け】直接使わなくても関係する理由

今回のAPIはエンタープライズプラン契約が前提になるため、一般的な企業のSNS運用担当者が自らこのAPIを呼び出して何かを開発する場面は多くないと考えられる。それでも、次の2点は運用者として押さえておく価値がある。

1つ目は、自社が利用している配信・マルチストリーミング系のSaaSベンダーが、このAPIを使ってX連携機能を強化してくる可能性がある点だ。イベント配信や新商品発表のライブ配信を外部ツール経由でXに同時配信している企業であれば、契約中のベンダーが今回のアップデートを受けてどのような新機能を出してくるかをウォッチしておくと、乗り換えや契約プランの見直しの判断材料になる。

2つ目は、モデレーター委任の上限が「1配信者につき最大20名」という具体的な数字で示された点だ。将来的にこの仕組みを使ったサードパーティツールが普及すれば、大規模なライブコマースやカンファレンス配信で、複数の運営メンバーが役割分担してチャット対応にあたる体制を、Xのタイムライン上の配信でも組みやすくなる可能性がある。現時点では対応ツールの有無を待つ段階だが、配信規模が大きいイベントを控えている企業は、利用中のベンダーに対応予定があるかを問い合わせておくと後手に回りにくい。

なお、Xでは配信以外にも透明性機能「Under the Hood」の拡張など、運用者が押さえておくべきアップデートが続いている。X「Under the Hood」拡張、政府による投稿制限の有無と対象国をJSONで確認可能にもあわせて参照してほしい。

よくある質問

Q. このAPIは誰でもすぐに使えますか。 A. 使えない。X開発者向けドキュメントの更新履歴によれば、今回のLivestream APIはエンタープライズプランの契約者向けに提供されるとされており、個人開発者が無条件で利用できるものではない。

Q. Live Studioと今回のAPIはどちらを使えばよいですか。 A. 目的による。Xアプリの管理画面から直接配信したい個人クリエイターや企業アカウントはLive Studioが対象になる。一方、自社サービスや外部プラットフォームの中にX向けの配信・チャット機能を組み込みたい開発者向けには、今回刷新されたLivestream APIが対応する領域になる。

Q. チャットのモデレーションは何人まで任せられますか。 A. X開発者向けドキュメントの更新履歴では、配信者1人につき最大20名までモデレーターを委任できる専用エンドポイントが新設されたと説明されている。

Q. 日本語での対応や国内での提供状況はどうなっていますか。 A. 対象言語や地域ごとの提供状況について、本稿執筆時点の一次情報に明記はない。エンタープライズプラン向けのAPIという性質上、国内で利用が広がるかどうかは、対応するサードパーティサービスの登場状況に左右される可能性が高い。

まとめ

Xは2026年9月23日、サードパーティ開発者向けのライブ配信APIをゼロから再構築したと発表した。永続的なRTMP管理・予約配信・ライブチャットの読み取りと返信・最大20名までのモデレーター委任という4つの機能がエンタープライズプラン向けに整備され、外部の配信プラットフォームがXとの連携を組み込みやすくなった。個人クリエイター向けの「Live Studio」とは対象読者が異なり、今回のAPIは企業・プラットフォーム側の裏側の仕組みにあたる。自社で直接開発する場面は限られるとしても、利用中の配信ベンダーの対応状況や、大規模配信時のモデレーション体制を検討する材料として押さえておきたい。

出典

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