VOC(Voice of Customer)とは?分析の手順とSNSの口コミから顧客の声を集める方法
VOC(Voice of Customer)の定義から、SNSの口コミを使ったVOC分析の具体的な手順、アンケートとの違い、分析に使えるツールまで解説。集めた声を施策に落とすところまで扱います。
VOCという言葉は「お客様の声を大事にしよう」という掛け声として使われがちだが、それだけでは施策に落ちない。アンケートの自由記述を眺めて終わっている、SNSのエゴサーチはしているが記録が残っていない——こうした状態は珍しくない。
この記事では、VOCの定義を整理したうえで、SNSの口コミを起点にしたVOC分析を実務の手順として説明する。集めるところではなく、集めた声をどう分類してどこに返すかまでを扱う。
VOC(Voice of Customer)とは
VOCは Voice of Customer の略で、日本語では「顧客の声」と訳される。商品やサービスに対して顧客が発した意見・要望・不満・評価の総称だ。
重要なのは、VOCが特定のチャネルを指す言葉ではないという点だ。次のようなものはすべてVOCに含まれる。
- コールセンターへの問い合わせ・クレーム
- アンケートの自由記述
- レビューサイト・ECサイトの口コミ
- SNSの投稿(企業へのメンションだけでなく、企業名を出さない言及も含む)
- 営業担当が商談で聞き取った要望
- 解約時のアンケート
「顧客の声を集める」と言ったとき、多くの企業が想定するのは上の1つか2つに偏っている。VOCという枠で捉え直す意味は、バラバラに集まっている声を同じ土俵に載せることにある。
なぜ「仕組み」として行う必要があるのか
VOCが単なる感想の寄せ集めで終わるか、意思決定の材料になるかは、集め方が仕組み化されているかで決まる。
担当者が気づいたときにSNSを検索する運用だと、次の問題が起きる。
- 見た人の記憶にしか残らない。担当者が変わると蓄積がゼロに戻る
- 量の変化がわからない。「最近クレームが多い気がする」が主観のままになる
- 良い声が拾われない。目に付きやすいのは不満なので、評価の声が抜け落ちる
裏を返せば、記録する・数える・分類するの3つが回っていれば、それはVOCの仕組みとして機能している。高価なツールを入れることが条件ではない。
VOC分析の手順
VOC分析の4手順。集める前に目的と返す先を決めておくのが要点
1. 目的を1つに絞る
最初にやるべきは、集める前に「何を判断したいのか」を決めることだ。VOC分析が形骸化する最大の原因は、目的を決めずに集め始めることにある。
目的の例としては次のようなものがある。
- 解約理由の上位3つを特定して、改善の優先順位を決めたい
- 新機能に対する反応が想定と合っているかを確認したい
- 競合と比較されるときに、どの点で負けているかを知りたい
**目的が決まると、見るべきチャネルと期間が自動的に決まる。**解約理由を知りたいならSNSより解約アンケートとサポート履歴が先だし、新機能の反応を見たいならリリース前後のSNSが主戦場になる。
2. 収集するチャネルを決める
目的に応じてチャネルを選ぶ。すべてを一度に見ようとすると続かない。
| チャネル | 向いている目的 | 注意点 |
|---|---|---|
| SNS(X・Instagram等) | 発売直後の反応、想定外の使われ方の発見 | 企業名を出さない言及が多く、検索設計が要る |
| レビューサイト・EC口コミ | 購入検討者が重視する点の把握 | 極端な評価に寄りやすい |
| アンケート | 仮説の検証、定量化 | 聞いたことしか返ってこない |
| サポート・コールセンター | 不具合・使いにくさの特定 | 満足している顧客の声は入らない |
| 解約時アンケート | 離脱要因の特定 | 回答率が低く、本音が出にくい |
SNSは「まだ言語化されていない不満」や「企業が想定していなかった使われ方」が出てくる点で、他のチャネルにない価値がある。一方で、企業名やサービス名を出さずに書かれる言及が多いため、検索するキーワードの設計そのものが分析の質を決める。
3. 声を分類する
集めた声は、そのままでは施策にならない。最低限、次の2軸で分類する。
- 内容の軸: 機能/価格/サポート/使い勝手/配送・納期/その他
- 評価の軸: 好意的/中立/否定的
この2軸で数えるだけで、「否定的な声のうち何割が価格に関するものか」が出る。感覚で語られていた課題が、比率として示せるようになる。
件数が増えて手作業の分類が追いつかなくなったら、テキストマイニング(大量の文章から単語や文節を切り出し、出現頻度や相互の関連性を可視化する手法)を使う方法もある。SNSのようにバラバラに発信されているが大局的には関連しているデータで効果を発揮する。
分類は最初から細かくしすぎないほうがよい。カテゴリを増やすと分類作業が重くなり、続かなくなる。5〜6分類で始めて、量が溜まってから分割するのが現実的だ。
4. 施策に返す先を決めておく
VOC分析が続かない最大の理由は、分析結果の行き先が無いことだ。集計して報告して終わりでは、次の月に誰も見なくなる。
着手前に、次のどこへ返すかを決めておく。
- 商品・サービスの改善要望リスト(開発部門)
- FAQ・ヘルプの追記(サポート部門)
- 広告・LPの訴求文言(マーケティング部門)
- SNS運用の投稿テーマ(運用担当)
とくにFAQへの追記は効果が見えやすい。同じ質問がSNSやサポートに繰り返し来ている場合、その回答を公開するだけで問い合わせ件数が減る。
VOC分析と口コミ分析の違い
「口コミ分析」という言葉もよく使われるが、両者は完全な同義ではない。
- 口コミ分析は、SNSやレビューサイトに書かれた第三者への発信を対象にする
- VOC分析は、口コミに加えてサポート履歴やアンケートなど、企業が直接受け取った声も含む
実務上は口コミ分析のほうが着手しやすい。公開データなので許諾の手続きが不要で、競合の口コミと比較もできる。まず口コミ分析から始めて、社内に閉じたデータを後から統合していく進め方が現実的だ。
SNSからの収集を体系的に行う手法はソーシャルリスニングでもっとSNSを効果的に運用しよう。ハウツーを解説、AIを使った近年の手法はAI時代のソーシャルリスニングとは?顧客インサイトを掘り起こす最新手法を解説で扱っている。
VOC分析に使えるツール
規模と目的によって、必要なものは変わる。
手作業で始められる範囲なら、SNSの検索機能とスプレッドシートで十分に成立する。週に1回、決めたキーワードで検索して、日付・チャネル・内容・分類をシートに記録していく。これでも前述の「記録する・数える・分類する」は満たせる。手動での検索のコツはエゴサーチのやり方【企業アカウント版】X・インスタ・TikTokの検索術と続けるコツを参照してほしい。
手作業が限界を超えたら、ソーシャルリスニングツールの導入を検討する。判断の目安は次のとおり。
- 週あたりの言及が数十件を超えて、目視で追いきれない
- 過去に遡って推移を見たいが、SNSの検索では古い投稿が拾えない
- 拡散したユーザーが誰かを特定したい
- 感情の傾向を自動で分類したい
レビューサイトを起点にする場合は口コミサイトを活用して口コミを集めよう!集め方も紹介、否定的な言及が増えたときの対応は【SNS時代は必須】風評被害対策の方法を解説!ブランドイメージを低下させないための施策にまとめている。
よくある失敗
声の大きい少数に引きずられる。SNSでは強い言葉ほど拡散する。件数を数えずに印象で判断すると、1件の激しい批判を全体の傾向と誤認する。必ず母数とセットで見る。
否定的な声だけを集めてしまう。改善が目的だと不満ばかりに目が向くが、好意的な声は「何が評価されているか」を示す。訴求文言をつくるうえではこちらのほうが直接役に立つ。
集めて終わりにする。前述のとおり、返す先を決めていない分析は続かない。最初の1回目から、小さくてもいいので1つ施策に反映するところまでやりきると、社内の見え方が変わる。
まとめ
VOC(Voice of Customer)は顧客の声そのものを指す言葉であり、チャネルを限定しない。分析として機能させるには、記録する・数える・分類するの3つが仕組みとして回っていることが条件になる。
手順としては、目的を1つに絞り、チャネルを選び、内容と評価の2軸で分類し、返す先を先に決めておく。この順で始めれば、ツールを入れる前でも成立する。手作業が追いつかなくなった時点で、ツールの導入を検討すればよい。
参考
- ソーシャルリスニングの課題と可能性:飲料メーカーの事例より|経営情報学会 全国研究発表大会要旨集 https://doi.org/10.11497/jasmin.2013f.0.100.0
- 顧客の声(VOC)を活用したマーケティングサービス(WHYリサーチ)|東芝レビュー2000年12月 https://www.toshiba.co.jp/tech/review/2000/12/f06.pdf
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