Instagram、AIグラス向け新機能を追加|回転視聴・スマホ同時撮影の使い方と企業アカウントへの影響

misosil編集部

Instagramは2026年6月30日、Ray-Ban MetaやOakley Metaなど「AIグラス」で撮影した動画をストーリーズでより見せやすくする3つの新機能を発表した。視聴者がスマホを傾けると視界が動く「スピンビュー」、グラスとスマホの映像を自動で組み合わせる「マルチカム」、グラス撮影素材に特化した編集ツールの3つだ。業界メディアのSocial Media Todayは2026年9月13日、これらの機能をあらためて取り上げる記事を配信している。発表から2カ月半以上が経った今なぜ再度取り上げられたのか、そして対応デバイスや提供状況について現時点で確認できることを、一次情報にあたって整理する。加えて、企業の公式アカウントがAIグラス素材を投稿フローに組み込む際に検討すべき点についても、他では扱われていない視点として解説する。

Instagramに追加された3つの新機能

3つの新機能は、いずれもAIグラスならではの一人称視点の映像を、視聴者にとって見やすい形に変換することを狙っている。

機能名内容想定される活用シーン
スピンビュー(Spin View)視聴者がスマホ本体を動かすと、撮影者が実際に見ていた視界を上下左右に見渡せるインタラクティブなストーリーズ形式旅行先の景色、店内・会場の空間紹介
マルチカム(Multi-cam)グラスのカメラとスマホのカメラで同時に撮影した2つの映像を、Instagram側が自動的に同期させて組み合わせる料理の手元とグラス視点、演奏と客席の反応を同時に見せる動画
グラス専用編集ツール構図の調整(Expand)、雑音を抑えて声を聞き取りやすくする音声処理(Audio)、再生速度の調整(Speed)をグラス撮影素材向けに最適化手ブレや画角のクセが出やすいグラス映像の仕上げ

スピンビューは、グラス側の広角カメラで捉えた映像を基に、視聴者の操作に応じて視点を切り替える点が特徴だ。単なる360度動画ではなく、撮影者が実際に首を動かして見ていた範囲を、視聴者が能動的に「探索」できる設計になっている。マルチカムは、グラスを装着した本人の一人称視点と、同じ場面をスマホで撮った第三者視点(あるいは自撮り視点)を1本の投稿にまとめる機能で、料理系やハウツー系のコンテンツで「手元」と「全体」を同時に見せたい場合に相性が良い。編集ツールの3項目(Expand・Audio・Speed)は、いずれもグラス撮影特有の課題、具体的には画角の傾きや環境音の混入、テンポの単調さに対応する内容になっている。

Instagramに追加されたAIグラス向け新機能3つと企業アカウント運用への影響を示す図解 スピンビュー・マルチカム・専用編集ツールの役割と、企業アカウントが投稿前に確認すべき点をまとめた図解

発表は6月末、9月に入って「再アピール」された背景

上記3機能そのものは、2026年6月30日のMeta公式発表と、それを受けたSocial Media Todayをはじめとする海外メディアの報道(7月1日〜2日ごろ)によってすでに広く伝わっている。つまり、9月13日のSocial Media Today記事は新機能の発表記事ではなく、既存機能を改めて取り上げた記事だ。同記事は「Meta first previewed these features in June, but the company is now looking to raise awareness of these advanced creation tools as valuable add-ons for AI glasses users(Metaはこれらの機能を6月に先行公開していたが、AIグラス利用者にとって価値のある追加機能として、あらためて認知を高めようとしている)」という趣旨を伝えている。

この「再アピール」のタイミングは、AIグラスを取り巻く逆風と無関係ではない。2026年に入ってから、Ray-Ban Metaなどのカメラ付きスマートグラスについては、装着者が周囲の人物を同意なく撮影できてしまう問題が繰り返し報じられ、一部ではイベント会場や映画館での着用制限、抗議活動にまで発展している。Metaは同年9月、無断撮影対策として一部端末のカメラ機能を無効化する措置を取ったとも報じられた。こうした「プライバシー面での逆風」が強まる局面で、Instagram側が「AIグラスは撮影・編集体験として便利だ」という前向きな価値提案を改めて発信した格好だ。SNS上での話題化を狙った新機能というより、AIグラスというデバイスカテゴリ全体への信頼を下支えする広報的な意味合いが強い発信だと捉えるのが実態に近い。

対応デバイス・提供状況・日本からの利用可否

一次情報から確認できる範囲を整理すると、対応デバイスはRay-Ban Meta、Oakley Meta、そしてMeta自社ブランドの「Meta Glasses」の3系統だ。一方で、機能ごとの提供開始日や対象国を明記した一次情報は見つかっていない。海外メディア各社の報道も「ローンチした」という表現にとどまり、具体的な国別のロールアウト計画までは記載されていない。この点は本記事執筆時点(2026年9月17日)でも未確定として扱う必要がある。

日本国内での利用可否についても、公式な言及は確認できていない。そもそもRay-Ban Metaをはじめとする対応グラス自体が日本で正式販売されておらず、この点は姉妹記事「Snap、ARグラス「Specs」を発売|2,195ドルの価格と日本未展開の現状を解説」で扱ったSnapの「Specs」が米国・英国・フランスの3カ国限定であるのと似た構図だ。AIグラス・ARグラスというデバイスカテゴリ自体が、当面は欧米中心の展開にとどまり、日本の企業アカウントにとっては「使えるかどうか」より先に「海外の動向としてどう備えるか」を考える段階にある。

独自視点: 企業アカウントの投稿フローにAIグラス素材をどう組み込むか

AIグラスの普及が進めば、店舗スタッフや広報担当者が手ぶらで一人称視点の動画を撮影し、それを企業アカウントの投稿素材として使う場面が増えてくる。スピンビューとマルチカムは、この用途において具体的な効果を持つ。

たとえば店舗の内覧や展示会ブースの紹介であれば、担当者がグラスを装着したまま歩き回るだけで、視聴者がスマホを動かして空間を「探索」できるスピンビュー投稿を作成できる。従来のように三脚とカメラを用意して360度カメラ用の素材を撮る必要がなく、撮影のハードルが下がる。マルチカムは、たとえば調理体験や製造工程の紹介で、グラス視点の「手元」とスマホで撮った「全体像」を1本にまとめる用途に向いている。飲食店であれば調理担当者の視点と完成品を映すスマホ映像を組み合わせる、製造業であれば作業者の視点とライン全体の様子を組み合わせる、といった使い方が考えられる。

実際の投稿フローに落とし込むと、(1)グラスとスマホで同時に素材を撮影する、(2)マルチカムまたはスピンビューでどちらの見せ方が伝えたい内容に合うか選ぶ、(3)Expand・Audio・Speedの編集ツールで画角のブレや雑音を整える、(4)投稿前に後述する肖像権・情報漏えいのチェックを行う、という4段階になる。撮影自体は手ぶらで完結する一方、(4)のチェック工程を省略しないことが、企業アカウントとして運用する上での分かれ目になる。

独自視点: ウェアラブル撮影の増加と肖像権・著作権チェックの必要性

前述の通り、AIグラスは装着者の意図とは関係なく周囲の人物や情報を撮り込みやすいという特性が、すでに社会的な論点になっている。企業アカウントがこの種のデバイスで撮った素材を投稿する場合、通常のスマホ撮影動画以上に、次のようなチェックが必要になる。

まず、店内やイベント会場に映り込む来店客・参加者の肖像権への配慮だ。三脚を立てて撮る動画であれば周囲も「撮られている」と認識しやすいが、メガネ型のデバイスは撮影中であることが外から分かりにくい。実際に、装着者が意図せず周囲を撮影してしまう問題が各国で報じられている経緯を踏まえると、企業として投稿する素材については、映り込んだ人物にモザイク処理を施す、事前に撮影許可を取った場面に限定する、といった社内ルールを整備しておく必要がある。次に、背景に流れる音楽・館内放送・展示物などの著作権チェックも、通常の動画投稿と同様に必要になる。グラス撮影は「ながら撮影」がしやすい分、素材の量が増えやすく、チェック漏れのリスクも比例して高まる点には注意したい。

これは単なる法務上の注意点にとどまらない。AIグラスをめぐる報道が「便利な新機能」と「無断撮影への懸念」の両面で並行して増えている状況では、企業アカウントが不用意な素材を投稿すること自体が、ブランドイメージへのダメージに直結しかねない。SNS運用担当者は、新機能の使い方を覚える段階で、投稿前チェックの手順もあわせて社内に定着させておく方が安全だ。

Instagramの「動画づくりの摩擦を減らす」施策群における位置づけ

今回のAIグラス向け機能は、単発の追加機能ではなく、Instagramがここ数年進めてきた「動画制作の手間を減らす」一連の施策の延長線上にある。素材の翻訳・編集・自動応答までを幅広くカバーする流れは「InstagramのAI機能まとめ2026|編集・翻訳・自動応答まで」で整理した通りだが、AIグラス向け機能はこの流れの中でも「撮影そのものの手間」を減らす側に位置づけられる。三脚・別撮り・複数アングルの手動編集といった作業を、グラスとスマホの自動同期に置き換える発想だ。

同時に、撮影後の編集負担を減らす方向の施策としては「Instagram「First Draft」登場、複数クリップから10秒でリールの土台を自動生成する新機能を解説」で紹介したFirst Draftがある。First Draftが「複数クリップから土台を自動生成する」機能だとすれば、今回のマルチカムは「複数の撮影源(グラスとスマホ)を前提に、その場で同期する」機能であり、両者は「撮る」と「編集する」それぞれの段階で摩擦を減らそうとする、同じ方向性の施策だと整理できる。企業アカウント運用者にとっては、個別の新機能を単発の話題として消費するより、こうした一連の流れの中で「自社の撮影・投稿フローのどの工程を効率化できるか」という視点で捉える方が実務に活かしやすい。

よくある質問

Q. スピンビューやマルチカムは日本からも今すぐ使えますか。 A. 対応デバイスであるRay-Ban Meta・Oakley Meta・Meta Glassesのいずれも、日本での正式販売は確認できていない。機能自体の国別提供状況を明記した一次情報も見つかっておらず、現時点で日本から利用できるかどうかは公式には確認できない。

Q. スマホだけでも似たような投稿は作れますか。 A. スマホ単体での自撮り動画やスマホ同士での撮影は従来から可能だが、マルチカムはグラスとスマホの映像を自動で同期する点、スピンビューはグラスの広角カメラを前提にした視点移動を実現する点が特徴であり、スマホ単体の撮影とは前提となる素材が異なる。

Q. なぜ6月に発表された機能を9月にまた報じているのですか。 A. Social Media Todayの2026年9月13日付記事は、Metaがこれらの機能への認知を改めて高めようとしている動きを伝えるものだ。同時期にAIグラスの無断撮影をめぐる懸念が強まっていたことも背景として指摘されている。

Q. 企業アカウントがAIグラスで撮影した動画を投稿する際、真っ先に確認すべきことは何ですか。 A. 映り込んだ来店客や周囲の人物への配慮、具体的には撮影許可の有無やモザイク処理の要否を投稿前に確認する社内フローを持っておくことが優先度が高い。撮影のハードルが下がる分、チェック体制を先に整えておく方が安全だ。

まとめ

Instagramが追加したスピンビュー・マルチカム・グラス専用編集ツールの3機能は、いずれもAIグラスによる一人称視点の映像を、視聴者にとって見やすい形に変換するものだ。発表自体は2026年6月30日で、9月13日の報道はその再周知にあたる。対応デバイスはRay-Ban Meta・Oakley Meta・Meta Glassesの3系統である一方、提供開始日・対象国・日本での利用可否は、現時点の一次情報からは確認できていない。

企業アカウントの視点では、撮影のハードルが下がることそのものより、投稿素材が増えることで生じる肖像権・著作権チェックの負担増に備える方が重要度が高い。AIグラスをめぐる無断撮影への懸念が社会的な話題になっている状況を踏まえると、新機能を使いこなす前に、投稿前チェックのルールを社内で先に固めておく順序が現実的だ。

出典

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