LinkedIn「Hiring Assistant 2」とは?メモリ機能を備えた採用AIの新機能と、日本での提供状況
LinkedInが採用AIエージェント「Hiring Assistant 2」を発表。メモリ・検証シグナル・音声プレスクリーニングなどの新機能と提供時期、日本での提供の有無、企業ページ運用者が押さえる点を整理する。
LinkedInが2026年9月末、採用担当者向けAIエージェントの次世代版「Hiring Assistant 2」を発表した。Social Media Todayは2026年9月30日付で報じている。最大の変更点は、採用担当者や企業の過去の採用傾向を覚えて次の候補者探しに反映する「メモリ」、候補者評価に加わる新しいシグナル、音声によるプレスクリーニングの3点だ。既存のHiring Assistant利用者には、2026年11月から無料で自動アップデートされる。
一方で、日本の読者にとって重要な点がある。現時点で確認できる公式情報は英語利用の顧客向けに限られ、日本での提供は未確認だ。それでも企業アカウントの運用者や採用広報の担当者にとって、無関係な話ではない。採用AIが候補者を探し、評価する時に、LinkedIn上のどの情報が見られるのかは、今後の運用設計に直結するからだ。
この記事では、公式発表で確認できる範囲で新機能を整理し、提供状況を確認したうえで、企業ページ・社員プロフィール・投稿に何が言えて何が言えないのかを分けて解説する。
Hiring Assistant 2の概要と発表内容
もともとのHiring Assistantとは
Hiring Assistantは、LinkedInが2024年10月に発表した採用担当者向けのAIエージェントだ。LinkedInの公式ページでは、次の4つの機能が中核として説明されている。
- インテーク:採用目標を採用戦略に落とし込む
- ソーシング:LinkedIn上で複数の検索を実行し、候補者プールを探す
- 候補者評価:LinkedInやATS(応募者追跡システム)にある応募者を短時間で評価する
- アウトリーチとプレスクリーニング:メッセージ作成の支援と、候補者への事前確認
2025年9月にはSocial Media Todayが、英語圏での提供拡大を報じている。初期の導入企業からは、1職種あたり4時間以上の時間削減、最終候補を作るまでに確認するプロフィールが62%減ったという声が紹介されていた。
2での主な変更点
LinkedInの発表とそれを伝える各メディアの報道から、Hiring Assistant 2の変更点は次のように整理できる。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メモリ | 採用担当者や組織の過去の採用傾向を学習し、次の候補者探しに反映する |
| 候補者評価のシグナル | メンバー認証、ATS由来の情報、プレスクリーニングの回答、職務経歴などを統合して表示する |
| Connected Apps | 連携したアプリ経由で、候補者の専門性を示す証拠を取り込む |
| 音声プレスクリーニング | 候補者への事前確認に音声機能を追加する |
| ワークフロー | 候補者対応、採用マネージャーへの確認、面接調整、ATS連携を一貫して支援する |
| 提供時期 | 2026年11月から、既存の利用者に無料で自動アップデート |
HR Brewによれば、LinkedInのプロダクト担当VPであるDan Reid氏は、個々の企業の採用慣行を理解して意図どおりに動く点が汎用的なAIとの違いだと説明している。
公式が示している数字
発表では、次の数値が示されている。いずれもLinkedIn自身の発表に基づく数字で、第三者による検証結果ではない点に注意したい。
- Hiring Assistantが見つけた候補者は、従来の方法で見つけた候補者と比べて、採用担当者が連絡する確率が4倍
- 上位マッチと評価された応募者は、面接に進む確率が2.6倍
- 面接水準の応募者を見つけるまでの時間が33%短縮
- プレスクリーニングの完了までの中央値は6分(従来は3.5時間とされる)
- 2万社以上が、LinkedInのエージェント型採用ソリューションを利用(AMD、Cisco、Ochsner Health、Palo Alto Networks、Zillowなど)
背景として、LinkedInは「過去3年でAI関連の求人が約200万件生まれた一方、世界の採用は30%減り、応募者1人あたりの応募数は30%増えた」という市場認識を示している。
Hiring Assistant 2の新機能(メモリ・シグナル・音声)と、企業アカウント運用者が確認すべき点
メモリ機能で何が変わるのか
職種検索から「過去の採用傾向」へ
Social Media Todayは、LinkedInの説明として次の趣旨を伝えている。以前の採用担当者は職種で検索していたが、Hiring Assistant 2は、その組織が過去に採用した地域・業界・経験レベルも自動で考慮する。
つまり、検索条件を毎回入力し直さなくても、「この会社はこういう人を採ってきた」という履歴が次の探索に効く。Wersmの解説では、候補者探しの方法そのものが変わるわけではなく、結果の優先順位づけが変わると整理されている。この見方は、公式発表の内容と矛盾しない。
マッチングの理由が見える
もう1点の変化は、なぜその候補者がマッチするのかを説明するシグナルが増えることだ。候補者の反応しやすさについても、プラットフォームの利用状況、Open to Workの設定、InMailへの返信率といった指標が提供されると報じられている。
採用担当者の側から見れば、返信が期待できない候補者に時間を使わずに済む。候補者の側から見れば、プロフィールの更新頻度やOpen to Workの設定が、連絡を受ける確率に関わりうる、ということになる。
人間の判断は残る
HR Brewによれば、採用担当者は各ステップのオン・オフを切り替えたり、AIの推奨を上書きしたりでき、エージェントの行動も確認できる。LinkedInは、採用の最終判断は人間が行うと強調している。完全自動で合否が決まる仕組みとしては設計されていない。
評価に加わる新しいシグナルと信頼性
検証・ATS・プレスクリーニング・Connected Apps
Hiring Assistant 2では、LinkedIn上の情報に加えて、外部由来の情報が評価に統合される。公式発表から確認できるのは次の項目だ。
- メンバー認証(本人確認などの検証ステータス)
- 提携ATSから得られる情報
- プレスクリーニングでの回答
- 職務経歴
- Connected Appsで連携した外部アプリ上の専門性の証拠
AIで作られた履歴書や応募が増え、応募が増えても採用は難しくなっているという市場認識が、LinkedInの発表の背景にある。「本物であること」や適合度を示す材料を評価に組み込むのが狙いと読める(この点は報道からの推測を含む)。
音声プレスクリーニング
プレスクリーニングに音声機能が加わる点も新しい。応募者にテキストではなく音声で質問し、回答を採用担当者に返す形だ。LinkedInは完了までの中央値を6分としている。日本語での音声対応については、後述の通り公式の記載が確認できない。
日本での提供状況【未確認】
提供状況は、公式情報から次のように整理できる。
| 確認項目 | 状況 |
|---|---|
| 提供時期 | 2026年11月から順次。既存のHiring Assistant利用者に無料で自動アップデート |
| 対象 | 英語でHiring Assistantを利用しているグローバルの顧客 |
| 公式ページの対応言語表示 | 英語・フランス語・ドイツ語・スペイン語・ポルトガル語・オランダ語など。日本語の記載は確認できない |
| 日本での提供 | 未確認 |
LinkedInのHiring Assistant公式ページは、イタリア語を含む複数のヨーロッパ言語を示す一方、日本向けの記載は見当たらない。2025年1月付のリクルートワークス研究所のコラムも、初期のHiring Assistantを「現在は英語のみ対応」と紹介しており、日本での提供予定には触れていない。
日本に法人を置く企業でも、LinkedIn Recruiterの契約や利用言語の状況によって、使えるかどうかは変わる可能性がある。ここは推測であり、正式な提供条件はLinkedInの営業窓口または公式発表で確認する必要がある。日本語対応の発表があれば、本記事を更新する。
【企業アカウント運用者向け】採用AIは企業ページや投稿を見るのか
ここからが、企業ページや採用広報を担当する人にとっての本題だ。先に結論を書く。Hiring Assistant 2が企業ページ・社員の投稿・企業ページの投稿を候補者探しの材料にする、という記載は、確認できた公式発表にはない。 以降は「公式に確認できること」と「推測」を分けて整理する。
公式に確認できること
候補者の評価に使われると明記されているのは、先に挙げたメンバー認証、ATSの情報、プレスクリーニングの回答、職務経歴、Connected Appsである。さらに、メモリは「採用した人の地域・業界・経験レベル」といった、候補者側の属性を学習する。
ここから言える事実は、AIが主に見ているのは候補者個人のプロフィール情報と、採用プロセス上のデータだという点だ。企業ページの閲覧数やフォロワー数が評価に使われる、という説明は確認できない。
推測として考えられること
以下は公式に書かれていない推測であり、効果の保証ではない。
- 社員プロフィールの整合性:自社の社員は、競合他社から見れば候補者でもある。職務経歴の記載が曖昧だと、検索やマッチングで見つけてもらいにくくなる可能性がある。公式は職務経歴をシグナルとして挙げているため、少なくともこの項目の正確さは評価に関わる。
- メンバー認証の取得:認証が評価シグナルに含まれる以上、自社の採用担当者や、外部から見られる立場の社員が認証を済ませておくと、信頼性の面で不利になりにくいと考えられる。
- 求人情報と企業ページの整合:応募者が企業ページや求人票を見て志望を判断するのは従来通りだ。AIが候補者に送るアウトリーチ文面の質は、求人情報の書き方に左右されると考えるのが自然だが、公式はこの点を明示していない。
- 投稿の役割は「AIに見つけてもらう」より「人に選んでもらう」:AIが連絡した候補者が返信するかどうかは、企業への印象にも左右される。この印象は、企業ページの投稿や社員の発信で作られる。ただし、これは採用AIの仕様ではなく、一般的なマーケティング上の考え方だ。
運用者が今できる3つの確認
| 確認すること | 理由 | 根拠の種類 |
|---|---|---|
| 採用担当者・主要メンバーのプロフィールの職務経歴を最新にする | 職務経歴は評価シグナルとして公式に挙げられている | 公式情報に基づく |
| 認証(メンバー認証)の対象者と手順を社内で整理する | 検証ステータスが評価に統合される | 公式情報に基づく |
| 求人票と企業ページの記載を揃える | 候補者がアウトリーチを受けた後の判断材料になる | 推測 |
企業ページの運用そのものを大きく変える必要がある、という材料は現時点では見当たらない。むしろ、候補者側の信頼シグナルと採用プロセスのデータが重視される方向だと読める。
LinkedIn上の企業アカウントの動きについては、関連する他の機能もあわせて確認しておきたい。つながり限定フィードの扱いはLinkedIn「Networkタブ」試験導入、つながり限定フィードで企業アカウントの投稿はどう扱われるかで、ブランド側の発信を広げる施策はLinkedIn、ブランド向け「クリエイター発見」機能をベータ導入 B2Bキャンペーンの調達を効率化で整理している。投稿文の品質管理についてはLinkedIn、誤字脱字だけを直す校正AI「Post Proofreader」を提供開始 Premium限定で『投稿を強化』を置き換えも参考になる。
導入を検討する採用チームの視点
Hiring Assistant 2の導入可否を考える採用チーム向けに、確認すべき論点を整理する。
効果の数字は自社環境で検証する
4倍や33%といった数字はLinkedInの発表値で、対象や比較条件の詳細は公開されていない。自社の職種、採用規模、ATSとの連携状況で同じ結果が出るとは限らない。トライアルや小規模な運用で、返信率・面接設定率・採用決定までの日数を自社で測るのが現実的だ。
ATS連携の対応範囲
ATS由来の情報を評価に使うため、自社が使っているATSが連携対象かどうかが重要になる。日本企業が使うATSが連携対象に入っているかは、公開情報からは確認できない。
メモリが偏りを強める可能性
過去の採用傾向を学習する仕組みは、効率を上げる一方で、過去の採用の偏りを再生産するおそれがある。これは仕組みから導かれる推測であり、LinkedInが対策を説明しているかは確認できなかった。ダイバーシティを重視する企業は、候補者プールの構成を定期的に見直す運用を設けたい。
よくある質問
Hiring Assistant 2はいつから使えるのか
LinkedInは2026年11月から、既存のHiring Assistant利用者に無料で自動アップデートされると発表している。移行作業は不要とされる。
日本でも使えるのか
日本での提供は未確認だ。公式ページの対応言語に日本語の記載は確認できず、2026年11月の対象は英語利用の顧客とされる。
追加料金はかかるのか
既存のHiring Assistant利用者へのアップデートは無料と発表されている。Hiring Assistant自体の利用条件や料金は、LinkedInの契約内容によって異なる。
企業ページの運用は採用AIに影響するのか
公式発表には、企業ページや投稿が候補者探しに使われるという記載はない。影響があるかどうかは不明で、本記事の推測部分も効果を保証するものではない。
候補者は不利にならないか
評価に使われるシグナルには職務経歴やメンバー認証が含まれる。候補者側がプロフィールを正確に保つことは、これまで通り重要だ。なお、LinkedInは最終的な採用判断は人間が行うとしている。
採用担当者はAIの判断を変更できるのか
HR Brewによれば、採用担当者は各ステップを切り替えたり、AIの推奨を上書きしたりできる。
まとめ
Hiring Assistant 2は、過去の採用傾向を覚えるメモリ、メンバー認証やATS情報などの新しい評価シグナル、音声プレスクリーニングを備えた採用AIエージェントの次世代版だ。2026年11月から、既存の英語利用者に無料で提供される。
押さえておきたい点は3つある。
- 提供は英語の顧客が先で、日本での提供は未確認。
- 評価の材料として公式に挙げられているのは、候補者のプロフィール情報と採用プロセス上のデータで、企業ページや投稿が使われるという記載は確認できない。
- 企業アカウント運用者が先に整えるべきは、採用担当者や主要メンバーのプロフィールの正確さと認証、求人情報の整合性。
日本語対応や提供条件の続報が出た時点で、内容を更新する。
出典
- LinkedIn Pressroom「LinkedIn Announces Hiring Assistant 2, its Next Generation Hiring Agent, to Help Recruiters Deliver Stronger Hiring Outcomes」(news.linkedin.com/2026/hiring-assistant-2、2026年9月末の発表)
- LinkedIn「Hiring Assistant for LinkedIn Recruiter & Jobs」(business.linkedin.com/hire/hiring-assistant)
- Social Media Today「LinkedIn updates its AI-powered hiring bot」(2026年9月30日)
- Social Media Today「LinkedIn Expands AI Hiring Assistant to More Regions」(2025年9月3日)
- HR Brew「LinkedIn announces its next generation recruiter agent」
- Wersm「LinkedIn Hiring Assistant 2 Adds Memory and Agentic Recruiting Workflows」
- ERE「LinkedIn’s Hiring Assistant 2 Aims to “Just Be Smarter”」
- リクルートワークス研究所「LinkedInのAIエージェント『Hiring Assistant』、採用業務の最大8割を自動化」(2025年1月17日)
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